ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「海炭市叙景」 〜凍てつく北の大地に昇る太陽〜

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公式サイト:http://www.kaitanshi.com//

監督:熊切和嘉
原作:佐藤泰志
製作:菅原 和博、前田 紘孝、張江 肇
企画:菅原 和博、映画『海炭市叙景』製作実行委員会
プロデューサー:越川 道夫、星野 秀樹
ラインプロデューサー:野村 邦彦
脚本:宇治田 隆史
音楽:ジム・オルーク
撮影:近藤 龍人
照明:藤井 勇
録音:吉田 憲義
美術:山本 直輝
スタイリスト:小里 幸子
編集:堀 善介
助監督:野尻 克己
(2010年 日本)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
北国の小さな町・海炭市の冬。造船所では大規模なリストラが行われ、
職を失った颯太(竹原ピストル)は、妹の帆波(谷村美月)と二人で初日の出を見るため山に登ることに…。
一方、家業のガス屋を継いだ晴夫(加瀬亮)は、事業がうまくいかず日々いら立ちを募らせていた。
そんな中、彼は息子の顔に殴られたようなアザを発見する。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

海炭市叙景 (小学館文庫)海炭市叙景 (小学館文庫)
(2010/10/06)
佐藤 泰志

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↑原作者の佐藤泰志さんは自殺してはるし、
予告編を見るかぎりおそらく暗い映画やろなぁという思いつつ、観に行ってきました。

造船所をリストラされた兄弟、立ち退きをせまられる老人(中里あき)、
妻(南果歩)の裏切りを疑うプラネタリウムで働く夫(小林薫)、
再婚した妻が自分の息子を虐待しているのではと疑いつつ自分は浮気する夫、
帰郷しても仲の悪い父(西堀滋樹)のいる実家には帰らない青年(三浦誠己)、など
オムニバス映画になっていて、話の内容も決して明るくはありません。

けれど、閉塞感はないんですよね。先に少し灯りが見えているようなそんな印象が残ります。

例えば、初日の出を拝みつつ兄の顔を覗き見る妹の笑顔(谷村美月さんのこの表情!いいですね)とか、
ふらりと帰ったきた飼い猫をなでる老女の手の表情等、ふとした瞬間にちょっとした温もりを感じます。
ラストの、登場人物達が登場する市電でのシーンも何か良いんです。ごくごくフツーで。

人の生活って、概ねこんな感じかもしれないなぁとか思ったりします。
上手くいかない事だらけでも、先に希望が見えるというか、見ようとしているうちは、
希望があるなぁって。結局、小さな幸せをどれだけ見出していけるかという事かもしれません。

登場人物の生活描写が妙にリアルなのも印象的。
テレビのニュースを見ながらの食事のシーンがリレーのように出てきてました。
年越しソバに入れる天ぷらが買ってきた惣菜っぽかったり、タッパから出される漬物等。
そういう細かい所が本当っぽいのは、こういう映画では結構重要な事やと思います。

最初に登場する兄弟をはじめ、登場人物達は総じて無口です。(賑やかなのは飲み屋の女子のみ)
あんなに長い間黙ってられへん関西人には、こういうしっとりとした空気感を作るのは
難しいかもしれへんなぁ等と思います。決して北海道の人が無口とは思いませんが。
大泉洋みたいな人もいますし)

“海炭市”のモデルとなった函館は、海がある坂道の街という部分が神戸に似ていますね。
夜景が綺麗なところも。この映画を見ると、現在神戸に市電が無いのがちょっと残念です。

十三 第七藝術劇場にて鑑賞。