ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「Ricky リッキー」 〜描写がリアルなファンタジィ〜

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公式サイト:http://www.alcine-terran.com/ricky/音が出ます!

監督・脚本:フランソワ・オゾン
製作:クローディー・オサール / クリス・ボルズリ
脚本:エマニュエル・ベルンエイム
撮影:ジャンヌ・ラポワリー
音楽:フィリップ・ロンビ
原案:ローズ・トレメイン
(2009年 フランス/イタリア)
原題:RICKY

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
郊外の団地で娘のリザ(メリュジーヌ・マヤンス)と二人で暮らす
シングルマザーのカティ(アレクサンドラ・ラミー)は、単調な日々を送っていた。
そんなある日、カティは職場の新人パコ(セルジ・ロペス)と恋に落ち、
パコは母子と共に暮らし始める。
やがて、カティとパコの間に子どもが誕生しリッキーと名付けられるが、
ある日リッキーに異変が起きる。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

先日観た「しあわせの雨傘」は、元になった戯曲には無い部分がオゾンらしい気もしましたが、
結構万人に受け入れられる展開ではないでしょうか。さほど毒気がなかったような。

それよりも前に創られたこの作品。
予告で見る“飛ぶ赤ちゃん”の可愛らしさに惹かれて見にこられた方も結構多かった気がします。
そのせいなのか、観る人の解釈におまかせ〜といった終わり方にちょっと会場がザワついていたような。

冒頭、福祉事務所でパートナーの失踪について相談するカティのシーンから始まります。
おそらく、カティに暴力を疑われショックを受けたパコが、家を出て行った時点でのシーンでしょうが、
ここから過去にさかのぼった(字幕では“数ヶ月前”となってたけど、妊娠・出産するのには
もっとかかるよね〜)後ラストまで、ここでのシーンが繰り返し出て来ることはないので、
話の流れがちょっとややこしいかもしれません。

子供をかかえ生活に追われるカティは、良くも悪くもない母親といった印象。
パコと出逢ったその日に会社のトイレで。。。。という展開には全く共感できないし、
最初のデートで家に連れ込む行動もうらぶれた感がいっぱいなんですが、
リザに対しては冷たいわけでもないし、これ位だらしない母親は現実にはかなりいそうな気がします。
そのリザはまだまだ親に甘えたい年頃で、母親を気遣う感じがなんとも健気。
この母娘は、すごく生活感が出てて、リアル。
パコの方も、悪い人ではなく父親らしいところもある平凡な感じ。

そんな中、リッキーだけは異彩を放つ存在。そりゃそうか。
とは言っても、単に彼に翼があるからというだけではなく、この子の持つ雰囲気。
なんというか、おやじのよう。何か豪傑の風格さえ感じる。
ミルクの飲み方さえ、豪快に感じてしまう。

翼といえば、羽の生える前のそれは、結構グロテスク。
鳥のそれというよりも、悪魔やこうもりの翼を連想させます。
肌を破り出血し、成長し続ける翼の様子を見ると、ちょっと鶏の手羽が苦手になるかも?!

リッキーの存在だけはファンタジィなんやけど、それ以外は全て超現実的。
ファンタジィとリアリティが重なる地点はここかぁと、ちょっと意外な展開に嬉しくなります。
原付に乗ってパコのお腹をギュッと持つリザの手が幸せそうで、このラストも好きです。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。