ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

第17回大阪ヨーロッパ映画祭(その2)

※ネタバレ含みます。

UNloved
UNloved

監督:万田邦敏
脚本:万田珠実、万田邦敏
撮影:芦澤明子
(2001年 日本)
【ストーリー】
彼となら“あるがままの自分”でいられる…。
わたしが、わたしであるために必要な強さと繊細さ。
三人がお互いに抱いた感情は、はたして愛なのだろうか?
2001年カンヌ国際映画祭でレイル・ドール賞&エキュメニック新人賞のW受賞作品。
(HPより転記させていただきました)

今年の大阪ヨーロッパ映画祭、イシハラホールのオープニング上映は
万田邦敏監督の短編映画「面影」(2010年)。
同監督のこの映画は見てみたいなぁと思っていましたので、
今回その機会を得て嬉しく思います。

雨の中、合羽を着て自転車で通勤。普通にやってますが、それが何か?

物語の始まりをざくっと紹介しときます。
市役所に勤める影山光子はリッチな起業家勝野と付き合い始めますが、
光子自身がなじめないと感じる勝野の生き方を彼が押し付けようとする事に
違和感を感じ別れを告げます。その後同じアパートの下の階に住む
下川に親しみを感じた彼女は、彼と付き合う事になり…。

お金持ちになりたいとか、有名になりたいとか、出世したいとか
そういう野心とは全く無縁に生きてきたので、森口瑶子さん演じる
影山さんにはすごい親近感感じます。
というか、こういう人って割とフツーに結構多いと私自身は思ってるんで、
なんでそんなことに疑問を感じる?と勝野・下川の両男性陣の方がなんか可哀想でした。

ただ、経済的環境や価値観等というものと、恋愛とを一緒くたに捉えるのは
何か違うかもとは思います。
こういう考え方の人やから好きになった♪という事もあるにはありますが、
なんでこんなヤツ!と思う人を好きになった後、自分の錯覚に気づいて、
幻滅するというパターンもあるやろし。

要するに、光子は勝野に誘われたから付き合っただけであって、彼に恋していたわけではないですよね。
映画の始まりから、勝野の方が一方的に光子を観察しているシーンが何度か出てきて、
光子の方は全く勝野を目で追ってないし。せっかく誘ってくれたから付き合おうか、
くらいの感じに私には思えました。

一方、下川に対する光子の態度は全く異なるものでした。
「こんなに親近感を感じた人は初めて」みたいなセリフがありましたが、
初めて接した時(コンビニでお金を借りた)から、下川が好きだったというのがよくわかります。
下川と寝た時の光子の態度もかなりベタやな〜と思うくらい、ものすごくわかりやすい描写になってるし。

この下川って人は自分が見えてないというか、怠け者のクセにお金は欲しいなんていう
甘チャンなんですよね。それでも、互いに違う意見を持っているのは当たり前の事やし、
そんな下川と付き合い続けようとする光子は、一貫して主張している考えとは別に
男性と関係を持続しようとしてるわけです。そんなわけで、
光子=“UNloved”(愛されない)存在という下川の発想は、全くピンと来ませんでした。

光子のセリフに全く嘘がないというのも珍しいし、ここまで理詰めのセリフで
全部を説明してしまう方法も、日本映画ではあまり見た事がないかも。
最後の方は下川同様、聞いてるこっちもちょっと疲れてしまいましたが。

森口瑶子さんはたまにドラマとかでお見かけしてもセリフが棒読みっぽいので
この映画であえてやってるのかどうかはよくわからないんですが、
時々なんか可笑しくてニヤついてしまったのは私だけでしょうか?

レストランで勝野が去った後のシーン、ピアノの音が急に不協和音っぽく聞こえ、
ここは自分がいるべき場所ではないと思う光子の心理がよく表現されてました。
他にも、勝野と下川弘(彼自身のセリフのせいで、フルネーム覚えてしまいましたよ〜)が
遭遇するシーンと下川が勝野を訪ねるシーンの対比等も面白いし。
最初から最後まで、ずっと緊張感がただようこの映画、個人的にはツッコミ所も多くて
見た人同士で会話が弾みそうな作品やなぁと思いました。

雨を確認する光子の手も印象的。

映画上映の後、監督を迎えてのディスカッションがありましたが、
一度家へ帰る事情もあり私は参加しませんでした。
このディスカッションの様子をどなたかブログにでもupされると嬉しいなぁと
他力本願な私です。


夕方、再び石原ビルを訪れました。今年はこれで見納めです。

“テラシア島のおまわりさん”(仮題)
Mikro eglima

原題:Mikro eglima
監督:フリストス・ゲオルギウ
(2009年 ギリシャ/キプロス
【ストーリー】
のどかな島で働く新人警官レオニダの毎日は退屈そのもの。
ある日崖下で男の死体が発見される。
島出身の美人テレビ司会者アゲリキが戻り、二人で捜査を進めるが。
美しい風景やユニークな村人たちも魅力的なロマンティックコメディ。
(HPより転記させていただきました)

UNloved”を見てちょっと疲れた後だけに、軽いタッチが嬉しかったデス。

信号無視した車を呼びとめようと、片手で二輪の台車から出した道具は、
調子っぱずれな音しか出ないサイレン。そんな、まともな備品もそなえていない
田舎警察にアキアキしながら勤めているレオニダの珍騒動物語。

どこまでも青い空に白壁の家々、そして猫の声。
せっかくの美しいエーゲ海の映像が、ちょっと暗めなのが残念ではありました。

「石ころだらけのビーチが気に入らないなら、来るな」
このメッセージは気に入りましたね〜。

ここから激しくネタバレになりますが、
ラスト、レオニダが落ちるシーンで会場内がザワつき、その後もう一回ドヨメキが。
この会場内の空気が、一番面白かったかも。