ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

悪人

akunin

公式サイト

監督・脚本:李相日
原作・脚本:吉田修一
音楽:久石譲
原作:吉田修一
(2010年 日本)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、
捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

予告で見た妻夫木さんの表情に惹かれるものがあって、観にいきました。
それがラストシーン灯台から夕日をながめるショットで、なにか心ゆさぶられるものがあったんです。

モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞された深津絵里さんよりも、
どちらかというと妻夫木さんの繊細な演技に引き込まれました。
今まで全く興味のなかった俳優さんやったけど、嬉しい発見です。

満島ひかりさんのビッチぶりもあそこまでいくと痛快さを感じるし、樹木希林さん、柄本明さんをはじめ
俳優陣のクオリティが高くて、邦画を見ててたまに感じる気恥ずかしさみたいなものがありませんでした。
樹木さんの、あの相槌ともなんとも判断できない「アァ」という合いの手(?)が良かったなぁ。

ハッとする印象的な場面も。
父親が死体安置所で、娘の足先にそっと布でつつむ様子、
屋内から撮ると、廃屋を取り壊すショベルカーが襲いかかる恐竜のように見えるシーンなど。

二人が逃避行するまでは夢中で見ていましたが、そこからがちょっと長かったかも。
殺された佳乃の父親(柄本明)と大学生の増尾(岡田将生)のやりとりは重要な意味を含んでいるけれど、
もう少し違う見せ方があったような気もした(あの一人だけまっとうな青年は何がしたかったのかなぁ)。
祖母が詐欺師堤下(松尾スズキ)の事務所へお金を取り返しにいくシークエンスも
ちょっと中途半端で、なんとなく付け足しの様に感じてしまったのが残念でした。
原作は群像劇だとどこかで読んだ気がするのですが、
映画の中ではその部分がうまく消化できてなかったのかもしれません。

「誰が本当の悪人なのか」というコピーですが、
“愚か”という事と、“善良”だという事は全く違いますもんねぇ。
自分を守られるのは自分だけなんやから、生きていくためには頭を働かせなければ!
性悪女の挑発に乗ったり、ろくすっぽ話もしてない異性とホテルに行くのは考えなさすぎです!
まぁ、ここでそんな正論言っても仕方ないんですが。

主人公二人の、行き場の無い閉塞感みたいなものは伝わってきたけど、
理解しがたいところもあって。佳乃が何故最後に、あそこまでの態度に出たか?
光代が何故急速にに祐一に惹かれ、あそこまで彼を引き止めたのか?

イカの刺身が透明感抜群で、いかにも新鮮でおいしそう!と
暗い場面にもかかわらず、食欲が増した私はりっぱな悪人かもしれません。
けど、イカの目玉から回想シーンへ入るって意外すぎる。

悪人(上) (朝日文庫)悪人(上) (朝日文庫)
(2009/11/06)
吉田 修一

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悪人(下) (朝日文庫)悪人(下) (朝日文庫)
(2009/11/06)
吉田 修一

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原作↑は、第61回毎日出版文化賞、第34回大佛次郎賞をダブル受賞したベストセラー小説。
吉田修一さんの作品は「パークライフ」しか読んだことないんですが、この本もそのうちぜひ。
映画化権は争奪戦になったと紹介されてます。

TOHOシネマズ なんばにて鑑賞