ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

シルビアのいる街で

SYLVIA

公式サイト音が出ます!

監督・脚本:ホセ・ルイス・ゲリン
製作総指揮:ルイス・ミニャーロ、ガエル・ジョーンズ
製作主任:アンヌ・ベネット、ニコ・ヴィヤレーホ
撮影:ナターシャ・ブレイア
美術監督:マイテ・サンチェス
音響:アマンダ・ヴィヤヴィエーハ
編集:ヌリア・エスケーラ
音響編集:マリソル・ニエヴァス
録音:リカルド・カサルス
(2007年 スペイン/フランス)
原題:EN LA CIUDAD DE SYLVIA/DANS LA VILLE DE SYLVIA

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
とあるカフェ、客を観察してはスケッチをしている画家志望の青年(グザヴィエ・ラフィット)がいた。
ガラス越しに一人の女性(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)を見つけハッとした彼は、
彼女が店を出るとその後を追う。彼女を追って市電に乗り込んだ彼は、
あるバーで数年前に出会ったシルビアではないかと声を掛けるが…。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

イマジネーションが広がるような、この感覚〜。久しぶりに好みの作品と出逢った気がする。

始まり。暗い部屋にほのかな光。静物に焦点を当てて夜が明けていく様子を見せるところなんて、
ビクトル・エリセ「エル・スール」みたいじゃないですかぁ。
この映画、エリセ監督のオススメらしいという事で観に行った私なんで、そう思ったのかもしれません。

監督を紹介する文章に「小津安二郎F・W・ムルナウを敬愛する」なんてありましたが、
正直、ムルナウなんて淀川先生の本でしか知らない存在なんですよね。
ただ、小津作品が好きなのはちょっとわかる気がしました。
ホテルの前の道のその縦に区切られた建物のラインをとらえた構図や、光のとらえ方、
トラムのガラス越しやカフェのガラスに映りこんだ人物等、一作品をみただけで、
この監督の好みが伝わってくるようで。

最初のホテルの部屋のシーンから、外での生活音が印象的に使われていて、
それは、この作品全体を通して言える事です。石畳を歩く足音や、音楽。
カフェのシーンでも、人々の話し声や笑い声、その表情やしぐさだけで、
見ているこちら側の想像力がこんなにかきたてられるんですね。

横一列に座っているドイツ人風(私には何故かそう見えたんですが)の男女3人が、
なんてつまらなさそうにしてるんやろっと思ったり、ソワソワと不安げな様子の中年女性がいたり。
後々、3人組じゃなくて左端の男性は中年女性とカップルらしいという事がわかってきたり。
何の話の進展もないのに退屈することもなく、とても魅力的なシーンです。

1日目のカフェのシーンでは、声をかけた女性に相手にしてもらえなかったり、
給仕人にコーヒーをかけられたり。後に出て来るバーのシーンでも、主人公の青年は
なんだか蚊帳の外的扱いなのが可笑しい。ここらへんは少しロメールの作品に似てる気もしたり。
それにしても、一夜を共にした相手が夜中に自分をじっと見つめてるなんて、
ちょっとゾッとしてしまいました。いくら相手が美形でもね。。。。

青年が女性をつけまわすシークエンスの中にも、引き込まれるショットがいくつかあって。
それは、アパルトマンの窓にかけられたスリップドレスが風にはためく場面だったり、
広場にあふれる陽光だったり。なんか、NHKの番組「世界ふれあい街歩き」を連想してしまいましたが。

ちょっと恥ずかしい気もするんですが、夢のような想像をめぐらした事が若い時には私にもあったので、
自分の理想とする異性をあてもなく捜していたその時の気持ちが、どうもこの青年とかぶってしまいます。
まっ、現実にはそんな事はほぼ起こらないわけでありまして。トホホ

印象的な登場人物も何人かいます。足の悪い花売りや、財布・ベルト・ライターを売り歩く男等。
停留所にいたランニング姿の太っちょのおじさんは、広場で鳩にエサをやっていた人と同じかしらん。

青年の観察対象は、様々な女性。カフェで女性が髪をまとめるショットや、
停留所で女性の風に髪をなびかせる女性の後姿等、ついつい見惚れてしまいますねぇ。
そんな中、停留所で隣に座ったおじさんが青年のスケッチを覗き込み、観察している様子も
なんだか微笑ましかったし。

こういう感覚が好きな方にはすごく印象に残る良い作品だと思いますが、
はっきりとした物語性、起承転結が映画の必須条件!なんて方には全く受け入れられないかも。
私個人は、この監督の今後の作品がヒジョーに気になるところです。

青年役のグザヴィエ・ラフィットは、結構いい年なのになんだか弱々しくて少年のよう。
どちらかというとオジサン好きな私の好みではないけど、この役にはぴったりやし、
ストラスブールという街の美しさと相まって、眼の保養にもなります。美しい女性も沢山出てくるし。

グザヴィエ君は過去に「女警部ジュリー・レスコー」の第43話「長い夜」に出演とあり、
再放送の時にチェックしようと思います♪ 
また、ピラール・ロペス・デ・アジャラは、オリヴェイラ監督の最新作で主演という事。楽しみ〜。

十三 第七藝術劇場にて鑑賞

追記:
監督のインタビューで「登場人物の視線と、観客の視線という二つの視線をテーマにしています。」と
ありました。なるほど〜、面白いですね。