ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

華麗なるアリバイ

kareinaru

公式サイト

監督・脚本:パスカル・ボニゼール
原作:アガサ・クリスティ
脚本:ジェローム・ボジュール
ラインプロデューサー: シビル・ニコラ
音楽:アレクセイ・アイグイ
撮影:マリー・スペンサー
編集:モニカ・コールマン
録音:フィリップ・リシャール
美術:ヴァウター・ズーン
衣装:マリエル・ロボー
(2008年 フランス)

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
上院議員のアンリ(ピエール・アルディティ)とその妻(ミュウ=ミュウ)は、
週末には田舎にある屋敷に客たちを招いてもてなしていた。
ある週末、精神分析医のピエール(ランベール・ウィルソン)と
その妻(アンヌ・コンシニ)が招待されてやって来る。
だが、同時にピエールの愛人エステル(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)も姿を現し…。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

恋愛劇としての上質な仕上がりに満足!!

正直、クリスティ作品を映画化したもので面白かったものなんて、ほとんどなかったような。
ビリー・ワイルダーの「情婦」は例外として)
「アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵」は、カロリーヌ・フロを主役に持ってきても
今ひとつ盛り上がらなかったし。同じ監督の「ゼロ時間の謎」(2007年)なんかは、とうとうみずじまいです。

それに加え、ポアロのシリーズの中では、私の中であまり好みではないこの作品が原作。

ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(2003/12)
アガサ クリスティー

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あのデビッド・スーシェのTVシリーズでさえ、この話はあまり面白く感じられませんでした。

がっ、やはり先入観はいけませんね〜。
見る前にあまり予備知識を入れない方なので、誰が撮って誰が出演してるか等も知らず。
ほとんど期待せずに観に出かけたとうハードルの低さも幸いしたのか、予想外に楽しめました。

まず、この作品が原作とかけ離れていることで、逆に説得力が生まれているように感じられました。
ポアロの存在が無いのも良かったですね。やっぱり恋愛群像劇を扱うのはおフランスのお家芸でしょうか。
イギリス人が創った映像作品よりも、男女の会話にもエスプリがきいてます。そして、登場人物が
衝動的行動に出る要素がやや多いような。
いずれにせよ、原作に頼りすぎないオリジナルな脚本の出来が良かったと思います。

監督・脚本のパスカル・ボニゼールは、ジャック・リヴェットの監督作品でリヴェットと
共同脚本を多数手がけている人でした。有名なところでは「美しき諍い女」(1991年)等。
直近では「ランジェ公爵夫人」が記憶に新しいところです。

そして、優れた俳優陣の演技合戦も映画の醍醐味ですね〜。

ランベール・ウィルソン。この人は、体裁だけは整えた薄っぺらいイヤな男の役が上手いなぁと
前から思ってました。ピエールの、出来ればこんな男に関わりたくないオーラがすごい出てましたね。
あっ、でも彼はなかなかいいヤツやったかもというのが、映画の後半で判明するんですけど。

ピエール・アルディティとミュウ=ミュウのコンビも楽しい。
ミュウ=ミュウは、回りを巻き込みつつその自覚がないどうにも鬱陶しい妻を演じ、
ピエール・アルディティは、そんな妻に苛つきつつも彼女の保護者的役割を演じています。

そして、マチュー・ドゥミが味のある俳優になっているという発見も嬉しかったです。
繊細さを感じさせる眼差しと、どこかユーモラスな表情が素敵でしたよん。
マチュー演じるフィリップとマルトのカップルは可愛らしくて、これは作品の中で
スパイス的役割を果たしてます。
マルトを演じたセリーヌ・サレットという女優さんは、ちょっとジェーン・バーキン
雰囲気が似てて可愛いですね。彼女のアパルトマンの部屋の様子からその慎ましい生活ぶりが伺えて、
そこだけ現実感漂ってましたねー。

レアの運転手役ダニー・ブリヤンフレンチ・ポップスのシンガーなんですね。へぇー
興味のある方は、Youtubeに結構上がってますよ。なんかラテンなノリです。
http://www.youtube.com/watch?v=wXTpjspTPUA&feature=related

そうそう、クロエの毒舌結構好きです。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。


追記:
「ホロー荘の殺人」を久しぶりに読んだら、面白いじゃありませんか!
クリスティお得意の人物描写が際立っていて、ユーモラスやし。
昔読んだ時は、何故かなんかあまり印象に残らなかったのが不思議です。
ポアロがあまり出てこないので、気に入らなかったのかなぁ。
ちゃんと読み直してから評価しないとダメですね。反省。