ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ザ・ロード

THE ROAD

公式サイト音が出ます!

監督:ジョン・ヒルコート
原作:コーマック・マッカーシー
脚本:ジョー・ペンホール
製作総指揮:トッド・ワグナー/マーク・キューバン/マーク・バタン/ラッド・シモンズ
音楽:ニック・ケイヴウォーレン・エリス

※ネタバレ含みます。

【ストーリー】
謎の天変地異がアメリカを襲い、ほとんどすべての動植物が死に絶え、文明も消滅。
そんな世界に残された父(ヴィゴ・モーテンセン)と息子(コディ・スミット=マクフィー)は、
ひたすら南を目指して歩き始める。生き残ったわずかな人々が互いを食らうという狂気の中でも
父は決して正気を失わず、息子に人としてのモラルを語り続ける。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

しゃくなげの花が咲く庭で美しい妻が微笑む。冒頭に流れる、平和で生活に彩りがあった時代と、
その後のまるで何もかもが枯れてしまったような世界との落差が、せつない。

地球の将来を舞台とした映画でよくある、いかにも作り物めいた未来とはちょっと違う気がするそんな映像。
静かで物悲しく生気が無い半面、過去にはそこに人間の生活が息づいてた気配が感じられます。
そんなリアルさに、絶望感が増します。

映画『ノーカントリー』の原作者でもあるコーマック・マッカーシーが、ピューリッツァー賞を受賞した
同名小説がこれ。↓

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)
(2010/05/30)
コーマック・マッカーシー

商品詳細を見る

ノーカントリー」もたいがいヘヴィでヘコむ映画やったけど、
この映画も結構キツいカットがあります。生理的に正視できない所もあったりして。
もちろん視覚面だけでななく、精神的にもキツいし。
ノーカントリー」とは違い全く説明的なセリフがないので、
なんで地球がこんな状況になったのかは想像するしかありませんが、
シネマトゥデイさんのストーリー紹介で「謎の天変地異がアメリカを襲い」とあるので
そうやったん?と今ごろ知りました。原作では、そのあたりの記述はどうなってるんでしょうね。

理由はともかく、その後の父子を追った映像がこの映画の全てです。
妻を失った悲しみに苛まれつつ、我が子を守ろうとする父の心情が痛いほど伝わってきて、
ヴィゴ・モーテンセンという人の凄さをあらためて感じました。この父子、本当に父子でした。

そして、息子役のコディ・スミット=マクフィー君が素晴らしい。彼の存在感は大きいですね。
最初は、寝顔がシャーリーズ・セロンに似ていて親子という設定がスムーズな印象でしたが、
次第にその演技に惹き付けられました。セリフも多くはないんですが、全身で“息子”でした。
そして、まさしく天使みたいでしたね〜。

エンドロールの背後でかすかに流れる音、日常の生活で聞こえてくる人々と話し声や犬の鳴き声など。
そんな温かみのある音を聞いていると、平和な営みのありがたさを再確認させられます。
そういえば、始めに父が馬を世話しているのどかなシーンがあり、ラストには飼い犬が可愛い顔を
見せてくれてました。日頃当たり前に感じているけれどかけがえのないものは、
身の回りにいろいろありますね。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。