ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

あの夏の子供たち

The Father 01

公式サイト

監督・脚本:ミア・ハンセン=ラヴ
製作:フィリップ・マルタンダヴィッド・ティオン
撮影:パスカル・オーフレ
編集:マリオン・モニエ
(2009年 フランス)

ネタバレ含みます

【ストーリー】
パリの街を携帯電話を片手に足早で歩く、映画プロデューサーの
グレゴワール・カンヴェル(ルイ=ドー・ド・ランクザン)。
映画製作会社ムーン・フィルムを経営する、映画愛とユーモアに満ちた魅力ある彼は、
殺人的な仕事量さえも楽しんでいるかのようだった。
仕事にも情熱を注ぎながらも、家に帰れば家族を愛する良き父親であるグレゴワールは、
週末は妻シルヴィア(キアラ・カゼッリ)と3人の娘たちと共にパリ近郊の別荘で過ごしていた。
(公式サイトより転記させていただきました)

作り手の静かな眼差しと、いのちのキラメキを感じる。

騒がしい音楽、パリの喧騒。携帯を手放さず、友人からは仕事中毒と言われるグレゴワール。
片手に携帯、片手にタバコと、ハンドルから両手を離して車を運転する姿には笑ってしまいました。

グレゴワール役のランクザンは、働き盛りの男性が持つエネルギッシュな魅力と共に、
優雅でノーブルで雰囲気を持つ、理想的な男性像を感じさせます。
映画の前半では、そんな彼と家族の豊かな愛情と触れあいがイキイキと描かれ、
この家族に愛着を抱かずにはいられません。

しかし、グレゴワールの苦悩がだんだんと表面に現れてきます。
そのうち爆発してしまいそうな彼の様子に、祈るような気持ちでなりゆきを見守る気分でした。
シルヴィアとグレゴワール、二人の最後のシーンが印象的です。
「このまま歩きたいんだ」というグレゴワール。胸が熱くなります。

そして“死”をむかえたその後については、感傷的にならず淡々と描いているので、
この家族と自分との一体感のようなものが生まれてきます。当たり前の事ですが、
“死”というのはあくまでも一つの出来事であって、家族の人生は続いていくんですよね。

the Father 02

別荘やイタリアでの滞在先、パリのアパルトマンでさえ、前半に描かれた家族の日常は美しく
光にあふれています。この細やかな描写ゆえ、過ぎ去った父との時間、夫との時間が、
より愛しく懐かしく感じられます。その時間の輝きが記憶にあるからこそ、
その後の辛い時間も家族と共に共有しているような、そんな気持ちで作品に寄り添っている自分がいました。

小さな女の子達の、この演技とは思えない様子にはほんとうに感心してしまいます。
彼女達の印象的なシーンも色々あったけど、大人と同じように握手をしながら挨拶をするといった、
おしゃまな行動が可愛い。
早く大人の女になりたい!大人と認めて欲しい!と主張しているような、甘えるだけじゃない、
時には生意気でも、そういった心意気がある女の子は可愛いなぁ。
子供っぽいのが良しとされてるような日本の社会ってどうなんだろ?などとふと思いました。

そして、フランス映画で時々みかける物。昔から欲しいと思っているごく普通のクラシックなワンピース。
シルヴィアが着てて、また思い出しました。日本ではなかなかお目にかかることが無いけれど、いつか欲しい。
The Father 03

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。