ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

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ブライト・スター〜いちばん美しい恋の詩(うた)〜

BRIGHT STAR 01

公式サイト
↑“Story”の見せ方が素敵です。

監督・脚本:ジェーン・カンピオン
撮影:グレッグ・フレイザー
プロダクションデザイン・衣装デザイン:ジャネット・パターソン
音楽:マーク・ブラッドショウ
(2009年 イギリス)
英題:BRIGHT STAR

【ストーリー】
1818年、ロンドン郊外のハムステッド。詩人ジョン・キーツ(ベン・ウィショー)は、
居候先でもある編集者チャールズ・ブラウン(ポール・シュナイダー)の家で、
隣人ブローン家の長女ファニー(アビー・コーニッシュ)と出会う。

仰々しいコスチュームプレイとは一線を画した、抒情詩のような作品。

手仕事のアップから始まる映像。
主人公ファニーは、服や小物を自分でデザイン・縫製するのが得意でそれを誇りにしているようです。
こういう女子っていいなぁ。ただ、最初の方で出てくる彼女の作る服はちょっと奇抜に感じました。
三重のプリーツで立たせたカラー(キーツに自慢してましたね)なんかは、面白いけどお洒落じゃないし。

ところがキーツと相思相愛になる頃からか、ファニーの衣装が落ち着いた色使い、
やわらかいデザインに変わっていきます。繊細で美しいコスチュームの数々。
ここで描かれているファニーは、私のイメージするこの時代の女性とはかけはなれています。
決して控えめとはいえない、ずけずけと物をいう勝気なタイプの女性。気持ちいいわぁ。
その彼女がキーツと出逢い、変化していくんですね。向こう見ずな所は変わりませんが。

それでも恋愛感情の表現は、控えめで禁欲的です。壁を通してお互いの気配を感じ取ろうとする、
これなんかもよくありそうな場面ですが、すごく自然でさりげなく、必然性さえ感じさせます。
若い二人の恋愛感情が率直に描かれていて、素直に共感できるんです。

キーツについて多くを知らない私でも、ファニーの気持ちになって耳を傾けると
その“詩的”な映像とともに、自分の中に詩がすっと入り込んでくるような感覚がありました。
映像と物語にリンクさせることで“詩”を感じとることは、より容易になるのかもしれませんね。
青い花の群生、このシーンの美しさは長く記憶に残りそう。

風采の上がらない病弱な感じのキーツと、健康的で力強いファニーが対照的で、ちょっと笑えます。
また、ベン・ウィショー演じるキーツからは繊細さと内に秘めた情熱も感じられました。
この役の彼を見て、なんとなくキリアン・マーフィーを思いだしました。
ウィショーの方が、あまりシリアスになりすぎない飄々とした雰囲気がありますけど。

ファニーが最初から嫌っているキーツの親友ブラウン。この俗っぽい人物は
すごいリアリティがあります。脇役ってやっぱり重要。
ファニーの妹と、ファニーの弟サミュエルもなくてはならない存在。
弟役のトーマス・サングスターくん、今回ほとんどセリフが無かったけど、ついつい目で追ってしまう。
そうそう、猫の使い方がイジョーに可愛いんですけどっ! 影の主役は猫ですね、間違いなく。

テアトル梅田にて鑑賞。
 
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