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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

だれのものでもないチェレ

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監督・脚本:ラースロー・ラノーディ
原作:ジグモンド・モーリツ
脚本:ユディト・エレク
撮影:シャーンドル・シャーラ
音楽:ルドルフ・マロシュ
(1976年 ハンガリー

【ストーリー】
1930年代初頭、独裁政権下のハンガリー。孤児たちは養育費つきで養子に出され、
少女チェレ(ジュジャ・ツィノコッツィ)もある農家に引き取られていた。
裸のまま働かされ、飢えや寒さ、虐待に耐え続けるチェレだったが、ある日とうとう家出をする。
新たな引き取り先で、使用人として働く老人と出会い、初めて人の優しさに触れるが、
その先のチェレにはさらに過酷な運命が待ち受けていた。

公式サイト

今回もネタバレですので、お気をつけください!

不思議な美しさにあふれた、残酷な世界。

「ニュープリントで31年ぶりにリバイバル公開!」
いいですねー。こういうフレーズにめちゃくちゃ惹かれます。
また、“だれのものでもない”という言葉がなんか興味をそそります。
もしかして人間の尊厳とか精神の自由とか、そんなものを含んだタイトルなのかしらん?と。

雄大な景色の一部分に現れた透明なふち飾りの中、オープニングクレジットが流れる。
映像の美しさをさまたげないこの始まり方は、なかなかめずらしいですネ。

黄金色に輝く大地の美しさが目に眩しい。そんな中、裸の子供が牛を追っている。牧歌的、のどかな風景。
しかし、よく見ると丸裸でいる程幼いとは思えない少女で、不自然な気がしてきます。
そして、あやしげな大人の登場で自体は一変するんです。

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この物語に登場する大人(老人以外)は、みな“鬼”のようで、ちょっとありえへんやん!と
見ている間は思ってしまいましたが、今考えると現実は案外そんなものかもしれませんね。
それでも、里親たちの非情さの見せ方にはどこか現実離れした所が感じられので、
グロテスクさは感じられませんでした。物語自体は充分に残酷なんですが。

また、どんな扱いをされてもまっすぐ前を向くチェレの眼差しや、子供らしい回復力や想像力等、
気が付くと見ている側が彼女に救われています。
理不尽な事に怒っている彼女は、食べ物さえ受け取ろうとしない。誰にも属してないからです。
森で見かける母子の姿に自分を重ね合わせ物語を作るチェレですが、孤児院での出会いに
救われるのかと思ったんですけどね。。。。一瞬、幸せが見えた気がしただけに辛いです。

我が子をいたぶり結果的にはゴミ箱に入れて死亡させた親のニュース等を見る時、
人の心にある深い闇のようなものを想像し、理解する事の難しさを思います。
神が創ったとされる自然の美しさ、そしてチェレの無垢な心や老人の慈悲のある心のきらめきが
感じられる程、大人たちの醜い心とのコントラストが際立ってきます。
救いのない物語なのに、何か幻想的で美しいものを観た感覚が残る魅力のある作品です。

それにしても、おじいさんは何故ミルクを飲んだのかしら? うーん。。。。

シネ・ヌーヴォにて鑑賞。