ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ピリペンコさんの手づくり潜水艦

pilipenko

監督:ヤン・ヒンリック・ドレーフス / レネー・ハルダー
製作総指揮:ヴォルフガング・クラーマー / フーベルト・マラディ
製作:イェンス・フィンテルマン / トーマス・ゼーカンプ
撮影:フロリアン・メルツァー
編集:シルヴィア・ナゲル
録音:トルステン・ズィルバーマン
音楽:ハインリヒ・ダーゲッフェア / フランク・ヴルフ
水中撮影:マルコ・フォン・デル・シュレンブルグ / クリスチャン・コピア
(2006年 ドイツ)

公式サイト

【ストーリー】
ウクライナのエヴゲイニフカ村で妻と年金生活を送る62歳のピリペンコさんの夢は、
自分で作った潜水艦で黒海に潜ること。彼は30年間その夢をかなえるため、
古い部品を買い集め、貯めた年金をやりくりしながらせっせとお手製の潜水艦を作り続けてきた。
村の人々はそんなちょっと風変わりな彼のことをからかいながらも、ひそかに応援していた。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「さえない一日でも、笑顔で明るくなる〜♪」

今回もネタ満載でバレバレですので、ご了承ください。

これは、ドキュメンタリー?!
たとえば、ピリペンコさんとセルゲイさんの会話のシーンでのカメラアングルとか、
タイミングがあまりにもよくて、とまどってしまいました。
おそらく、演出された部分があるんでしょうね。

いずれにせよ、ここに映し出されているのは事実だと思います。
人々がすごく自然で、しかも編集が上手いのか、物語としてもよくできています。

ウクライナでは、不可能な事を示すのに
「まるで草原にある潜水艦のよう」と言う言葉があるそうです。
確かに「水中スポーツ云々」という雑誌だけを参考に、専門知識もなく潜水艦を
手作りして黒海に潜水するなんて!無謀やわぁ〜。

30年もコツコツと潜水艦をつくるその姿に「世界最速のインディアン」をちらっと思い出しました。
でも、ピリペンコさんはもっとゆるゆる〜な感じです、全てにおいて。

潜水艦に年金をつぎ込むことに文句を言ってる奥さんや、何かと協力的なセルゲイさん、
最初のうちは潜水艦の事を笑っていた村の人々との人間関係が素敵。
食卓に並ぶボルシチ風トマトシチューや、羊の肉の煮込み風スープ等、豪快な料理もおいしそう。
そして、宴会の席に歌が欠かせないこんな民族性が羨ましい。日本でいうと琉球の方たちみたいに。
しかも、歌の内容がなんだかいいんです〜。
ピリペンコさんが歌う「谷間に咲く5月の白い百合〜♪」もなかなか聞かせます。

特別じゃないものの大切さ、みたいなものが伝わってくる村の様子も美しかった。
一匹だけ後から道を渡るマイペースなアヒルや、飼われているというよりも家にいついている犬たち。
家の前の木の柵はブルーで、ベンチはグリーン。この、家の前の道に置かれているベンチで、
近所の人がゆっくり休んでいたりする。(=^_^=) りんごを近所に配っているおじいちゃんも可愛い。
グリーンのベンチに座るピリペンコさんが迷彩柄のTシャツだったり、奥さんがブルーカラーの
ワンピースを着ていたりするのは、やっぱり演出なのかなぁ?!
そういえば、ピリペンコさんの潜水艦もグリーンだった。そこに書かれている国旗のカラーも
ブルーとイエロー。なんだか色の調和がとれすぎてるゾッ。

結構テキトーな感じのピリペンコさんなので、いざ潜水!という場面では結構ドキドキハラハラ
します。結果は、笑ってしまいましたヾ(〃▽〃)ノ 
最後には、孫に「どっちに行ったらいいと思う?」なんて聞いてしまって。

試運転でそんな感じだったんで、黒海に繰り出したシーンでは、またもハラハラしましたよ。
それよりも、いざ海を前にしてピリペンコさんが言った言葉「なんだか家に帰りたい」。
クスッとしながらも、すごくわかる気がしました。人間って面白いです。

エンドロールの後も男二人の会話は続きます。あ〜、この必死じゃない感がよいわぁ。

シネ・ヌーヴォにて鑑賞。