ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ずっとあなたを愛してる

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監督・脚本:フィリップ・クローデル
製作:イヴ・マルミオン
撮影:ジェローム・アルメーラ
音楽:ジャン=ルイ・オベール
美術:サミュエル・デオール
編集:ヴィルジニ・ブリュアン
(2008年 フランス/ドイツ)
原題:IL Y A LONGTEMPS QUE JE T'AIME
公式サイト:http://www.zutto-movie.jp/

【ストーリー】
わが子を殺害した理由を語ることなく15年の刑期を終えたジュリエットクリスティン・スコット・トーマス)は、
歳の離れた妹レア(エルザ・ジルベルスタイン)の家に身を寄せる。
長い空白期間を経て再会した姉妹はぎこちなく、彼女はレアの夫や娘たちとも距離を置く。
孤独の中に閉じこもるジュリエットだったが、献身的な妹や無邪気な姪と過ごすうちに
自分の居場所を見いだしてゆく。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

女の顔は変化する。彼女達が女優である所以はここかも。

クリスティン・スコット・トーマスという人は、私が思うにマレーネ・ディートリッヒ顔じゃないでしょうか。
妖艶で退廃的なムードが似合う一方、意思の強さを感じさせるエラの張り出した、まさに堂々とした“顔”です。
こういうある種すごみのある顔の女優さんって、日本ではあまり見かけない気がします。

今回も、彼女の顔に魅せられましたー。それは“美しい”とかそういう事ではなくて。
顔(表情)で、多くを語るとでも言えばいいんでしょうか。
冒頭、目の周りに影がさしたようなジュリエットの顔。何かをあきらめたような表情から、
幸せとは遠いところにその身を置いているような彼女の状況を、うかがい知る事ができます。
鳥のさえずりと陽光に一瞬目を細める彼女。この一瞬の表情で「もっと彼女の人生を知りたい」
気持ちになるのが不思議です。ここらへんの間がすごく好き。出だしからいい感触でした。

そして、ジュリエットに惜しみない愛を注ぐ妹レア役のエルザ・ジルベルスタイン。
映画「ミナ」(1993)では、ぽっちゃりと垢抜けない“エテル”役だった彼女が、
こんなにスリムで素敵な、年齢を感じさせない女性になっててビックリしましたヨ〜。
ロマーヌ・ボーランジェ(ミナ)がおしゃれさんだっただけに、当時は対照的でした。
レアの表情からは優しい人柄が滲み出ててるようで、とてもキュートです。

キュートといえば、レア夫婦の子供たち!
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↑プチ・リス(ベトナム人の養女)とポールおじいちゃんの存在が救いでした。

ジュリエットとレア姉妹のピアノ連弾の場面、後ろではしゃいで踊るプチ・リスはすごく自然やったなぁ。
このシーンにはギュギュっと幸せが詰まってますね。

劇中で、酔っ払った友人がくどくどとエリック・ロメールについて語るシーンがありました。
監督は、ロメールを別格扱いのようにとらえる傾向には意義を唱えたい人なのか、
はたまた単に面白がってるだけか。どちらにしろ象徴的に扱われる監督なんですね、やはりロメールは。
フィリップ・クローデル監督は、私と同年代なのですね。ふーん。

また、この映画では水が効果的に使われていました。フランス映画の中では、登場人物が
定期的にプールに通い泳ぐというシーンがよく出てきますが、ここでも。
水の中ではエリザベスでさえ、少しだけ心を開放してる様に見えます。
そしてラストシーン、横なぐりの雨。でも優しい雨なんですね、これが。

それぞれの登場人物が人間関係を少しずつ構築していく様子が、
とても丁寧に細やかなタッチで描かれている作品だと思います。
エンドロールの曲も素敵。

テアトル梅田にて鑑賞。