ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

カティンの森

カティンの森 (集英社文庫)カティンの森 (集英社文庫)
(2009/10)
アンジェイ ムラルチク

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監督・脚本:アンジェイ・ワイダ
(2007年 ポーランド)
原作:アンジェイ・ムラルチク
脚本:ヴワディスワフ・パシコフスキ / プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ
撮影:パヴェル・エデルマン
音楽:クシシュトフ・ペンデレツキ

【ストーリー】
1939年、ポーランドはドイツ軍とソ連軍に侵攻され、すべてのポーランド軍将校はソ連の捕虜となった。
アンジェイ大尉(アルトゥール・ジミエウスキー)は、彼の行方を探していた
妻アンナ(マヤ・オスタシャースカ)と娘の目前で、東部へ連行されていく。
アンナは夫の両親のもとに戻るが、義父はドイツに逮捕され収容所で病死し、
残された家族はアンジェイの帰還を待ち続ける。(シネマトゥデイより転記させていただきました)

映画以上に私の胸を強くうったのは、公式サイト「メッセージ&プロダクションノート」の
項目にある監督のメッセージでした。
公式サイト:http://www.katyn-movie.com

カティンの森事件」のように、理不尽な大虐殺はその後も起き続けています。
また、歴史的事件が虚偽によりプロパガンダとして利用されるというのも事実でしょう。

けれども、監督自身の言葉にもあるように歴史的史実を明るみに出す事が目的ではなく、
この映画は永遠に引き離された家族の物語なんですね。

この作品には幾人もの思いや人生が織り込まれています。
アンジェイ大尉と妻アンナ、アンジェイの父ヤンとその妻、アンジェイにセーターを貸したイェジ、
大将と妻のルジャ、ピョトル中尉と妹でレジスタンスのアグニェシュカ、アンナの甥タデウシュなど。

大戦中はレジスタンス活動をし、戦後は美術学校の入学を目指すタデウシュは、
若かりし頃の監督自身の姿が投影されています。彼のエピソードはとても切ないけれど、
この作品に瑞々しさを与えているように思います。

監督自身が「カティン事件」の真相を知ってから半世紀の時を経てやっと映画化されたという事を考える時、
私たちの想像もつかないような彼自身の心の内に、ほんの少し触れる事ができたのかもしれないと感じました。
今は、まだ多くを語る事ができませんが。

シネリーブル梅田にて鑑賞。