ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ファッションが教えてくれること

Vogue [US] December 2009 (単号)Vogue [US] December 2009 (単号)
(2009/12/01)
不明

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↑現時点でのUS版ヴォーグ最新版。表紙をかざるケート・ブランシェットの神々しい美しさ!

監督・エグゼクティブプロデューサー:R・ J・カトラー
英題:THE SEPTEMBER ISSUE
(2009年 アメリカ)
公式サイト:http://www.fashion-movie.jp/

【ストーリー】
2007年、アメリカ版「ヴォーグ」9月号の締切り5か月前。秋のファッション特大号であり、
一年で最も重要な号の準備に編集長アナ・ウィンターは忙しい。
トレンド傾向を見極め、特集すべきテーマを決め、撮影準備に入っていくアナは、
部員から提案される掲載候補服の採用、不採用を決めるなど、分刻みで仕事をこなしていくが……。
(シネマ・トゥデイより転記させていただきました)

「ファッションのことを恐れる人は大勢いると思うわ」

アメリカ女性の約10人に1人、1300万人が読む米版ヴォーグ編集長アナ・ウィンターに密着した
ドキュメンタリー。

はて?「ファッションを恐れる人」とはどういうことなんでしょう?
それはですね、アナいわく※ここからネタバレ含みます。
「自分がクールなグループに属していないと感じて」ということらしい。
「ファッションの何かが人々を動揺させるのね」とも。

確かにそんな風に感じたりする人もいるでしょうが、“恐れる”というのはいささか大げさな気がする。
“楽しむ”人がほとんどじゃないでしょーか。そうでもないのかな。
私個人は、たかがファッションされどファッションという感じです。

それにしてもアナ・ウィンターという一人の女性が、ここまでの影響力を持っているのには驚きました。
カール・ラガーフェルドをはじめとした一流デザイナー達がこぞってアナの意見を聞きたがる。
ヴォーグのスタッフいわく「アナはヴォーグという教会の教皇」と。
もちろん、ヴォーグの編集においてはアナの意見は絶対的。
おそらく日本のようにファッションが多様化している国では、アナみたいな存在はありえない気がします。

そんなアナと対照的なのは、クリエイティブ・ディレクターのグレイス・コディントン。
彼女はもっとクリエイティブというか、その作品は芸術的で印象的。アナがグレイスのつくったページを
次々とボツにしていくものの、その実力や才能を認めているという関係性が面白い。

話の中心の材料となるUS版Vogueの2007年12月号、この表紙を飾るのはファッションアイコンでもある
女優のシエナ・ミラー。可愛くてファッショナルブルなんやけど、彼女自身からカリスマ性やスター性は
伝わってこない。なんだかハスッパ感じがしてしまうのが、彼女の致命的な欠点という気がする。

予想どおりだったのは、アナ以外のヴォーグに関わっている人たちが全くファッショナブルじゃないという事。
グレースをはじめトニーや他のスタッフたちの全く手をかけてない風に見えるその髪は、
一度決めた自分のスタイルにとらわれすぎた結果のように見えてしまう。

けれど、アナはいつでもファッショナブル。かつ、様々なカラーやプリントを着こなしている姿は
決して保守的ではない。自分を魅力的に見せるファッションを熟知しゴージャスに時には可愛く、魅力的だ。

ヴォーグ・ファッション基金による若手デザイナーの育成や、エイズのためのチャリティ・イベント
「セブンス・オン・セール」をスタートさせる等、社会的貢献度も高い彼女。
インタビュアー「強みは?」 アナ「決断力」
インタビュアー「弱みは?」 アナ「子供達」 そう言って微笑む彼女は可愛いかった。

Vogue12月号にはヒラリー・クリントンの記事もあるみたいですね。ちなみに、映画の公式HPに
紹介されていたアナのエピソードとして、過去にヒラリーとのこんないきさつがあったようです。

【ヴォーグが提案した服を着ることで、世間に女性を売りにしたイメージを与えることを恐れた
ヒラリー・クリントンが急遽、表紙の撮影を中止に。そのことについてアナは「同時代の女性が、
男性的な装いをしなければ権力を求める者として真剣に受け止められないと考えるなんて、
その概念には失望させられる。ここはアメリカでサウジアラビアじゃないんだから」と誌面で痛烈に批判。】

梅田ブルク7にて鑑賞。