ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ポー川のひかり

監督・脚本:エルマンノ・オルミ
(2006年 イタリア)
原題:Cento Chiodi

【ストーリー】
ちょうど大学が夏期休暇に入ったばかりの時期に、イタリアのボローニャ大学で
大量の貴重な古文書が太い釘で打ち抜かれるという事件が起きる。
警察からその容疑者と目されたのは、将来を嘱望されていた哲学教授(ラズ・デガン)だった。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

「神こそ、この世の苦痛に対して釈明するべきだ」

キリスト教徒でない私にしてみれば、脱哲学的思考でいきたいもんだっ!
と日頃から漠然と思っているので、主人公の考え方ががっちがっちに硬く感じられる。
もっと肩の力抜いていこーよっ。

とは言ってもラズ・デガンさんは、女性達がメロメロというのもわかる気がする
雰囲気のあるハンサムな俳優さんでした。

主人公(キリストさん)へのちょっとした反感はあっても、ポー川の情景!
これは捨てがたいものがあります。

草むらから日の出とともにこぼれ出る光の美しさ。
闇に浮かび上がる月、その光で漆黒とブルーが溶け合い
なんともいえないミステリアスな色に。
人間なんて、自然の前には無力だなと思わせる瞬間。

また、川沿いのサンルーム(の壁がないバージョン?)の様な建物で
くつろぐ人達の様子には、実に素晴らしいいごこちなんだろうなぁと
こちらを信じて疑わせない空気感がある。

早い時間からワインを飲み、思い思いにくつろぐ様子に
こちらものんびりとした気分になる。いいなぁ、近所にこんな場所が欲しい。

元気にバイクで走り抜けていくゼリンダ、太股をあらわにしてても
全く色っぽくないのが笑えるけど、可愛い。
郵便配達のダヴィデもナイスガイ。

一番印象深かったのは、村の老人が聖書の有名な奇跡の話(ワインを出す)を
教授から聞いたのがきっかけで、昔聞いた聖書の一説を思い出すエピソード。
老人自身が書物(聖書)を読むのではなく、教授(イエスさん)に語って聞かせる
もらうという事に意味があると思わせる様な演出が美しかった。

同監督作品「木靴の樹」にも言えることだけど、
根っこのある生活、そんな当たり前な営みの美しさ。
それを今回はシンプルに描かず、まずサスペンスタッチで観客を引き込む意図が見えた。
これって先日観た「湖のほとりで」のつくり方とちょっと似てるかも。

梅田ガーデンシネマにて鑑賞。