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ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

浪漫者たち

監督: 田中千世子

(2009年 日本)

俳優の伊勢谷(伊勢谷能宣)は新しい舞台の通しげいこと平行して、
1年ほど前から始めた能も習いに通っていた。
彼はある日、以前からの念願の、御神体がお山である奈良県桜井市大神神社を訪れる。
その道中では日本浪曼派の研究をしているという女性(石川真希)や、
ギターを抱えた不思議な男性(佐野史郎)との出会いが彼を待っていた。
(シネマトゥデイより転記させていただきました)

三輪山を しかも隠すか 雲だにも 情あらなも 隠さふべしや(万葉集より) 
   
基本フィクションなんですけど、能楽師・梅若靖記さんや茶道教授とその娘さん等は
実名で出演されているし、史実や文化についてはノンフィクションと言えるかも。
「部分的にセミドキュメンタリーのタッチが躍動する」と公式HPには記述がありました。
面白い構成ですね。

この映画には目を惹く様な派手な美男美女が全く登場しないというのも
ノンフィクションっぽいタッチの一因かも、なーんて思ってしまいました。

主人公伊勢谷は、大神神社で知り合った女性に聞いた話から「日本浪漫派」に
興味を持つという設定です。

出会いによって知的欲求が刺激されそれまで未知だった世界を勉強するという事、
中でも人との出会いによってというのはワクワクします。

映画の中では日本古来の文化に触れたいと思っていた主人公だったので
「日本浪漫派」の設定だったのか、はたまた監督の思い入れかわかりませんが、
別に浪漫派でなくても万葉歌集でも、また山岳信仰についてでもいいんですよね、
見ているこちら側としては。

伊勢谷が保田與重郎の著書「ヱルテルは何故死んだか」を読みながら、
その難解さに苦労しているシーンが自然体に見えて面白い。

初めはなかなか理解しずらい文章等も、何度も反芻しながら自分の中で
消化していくと、結果的に何か得るものがありますよね。
普段は何かと安易な方に流れていってしまいがちな私なので、
時々は自分の理解力や読解力を鍛えるという事も必要やなぁと感じています。

「読書会」をしたいなぁと常々思っていたのも、人に勧めてもらう本の中には
普段自分が手にとりそうにない分野でクオリティの高い作品もあって、
ちょっと無理してでも読破できるだろうなというもくろみも含まれています。

映画の中でも「読書会」のシーンが出てきます。
伊勢谷は保田與重郎の本を引き合いに出して、題材となった本についての
自分の解釈を披露しようとします。
が、話の腰は折られ、トリュフォーの映画の話題から違う方向へと。
このシーンもちょっと笑えました。

笑えたと言えば、佐野史郎さんが演じた人物が面白かった。
皮肉屋なピエロの様な。まるで伊勢谷が創り出した様な存在でした。

違う意味で笑ってしまったのは、試写会の後のパーティのシーン。
仮面!つけるってどーゆーこと?!

好感が持てたのは、映画の中で、主人公の茶室に入る時の襖の明け方や
神社に足を踏み入れる都度の礼等、基本的な礼儀作法が出来ていた事。
当たり前なんですが、ちょっとホッとしたりして。

大神神社(おおみわじんじゃ)の御神体でもある三輪山
その懐に抱かれたくなる、そんな映像。

シネ・ヌーヴォにて鑑賞。