ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

小三次

監督:康 宇政
(2009年/ドキュメンタリー映画/104分)

http://www.cinema-kosanji.com/#

【作品紹介】
“記録を残すのが嫌いな人”を“記憶するドキュメンタリー映画”
「元々、撮られることは好きじゃないんです…」そんな言葉を口にする
柳家小三治師匠。(中略)この作品では、高座の表舞台と裏舞台で
落語を通じて、弟子を育てること。己を磨くこと。そして落語と格闘している
噺家の“ひたむきな姿”をドキュメンタリー映画として描き出しました。
(チラシより転記させていただきました)

「100点満点とらないと、自分で自分を許可できない。」

上野・鈴本演芸場、楽屋での柳家小三治師匠。静かである。
なんだかピリピリした雰囲気を感じる。
付き人らしき人等ともほとんど言葉をかわさない。

一転、高座に上がると妙になごみの雰囲気を醸し出すから不思議。
決してゆるんでないのに、意図的に緊張感を緩和させるのはすごい。
これは絶妙な「間」のたまものか。

「『緊張の緩和』が笑いを生むんです。」
この言葉はかつて2代目桂枝雀さんが上岡龍太郎さんに言ってはったんですが、
聞いた時に「なるへぇー!」と合点した覚えがあります。

小三治さんが映画の中で言っていたのは「笑いとは、悲しいのを笑うこと。」
みたいなニュアンスの事でした。
こちらは「理解」できたとは言いがたいんですが、感じるところがあります。
いずれにせよ「笑い」って奥が深い。

とにかく小三治さんは真面目。マジメだぁー!
「自分が楽しめなきゃ、人は楽しめないよ。」
そう言いつつ、「あれは自分自身に言い聞かせてるんです。」と。
落語と格闘するその姿は、とても苦しそう。

ストイックなまでに常に笑いを追求していた2代目桂枝雀さんの自殺が頭に残ってるせいで、
そんなにがんばらんでもええやんとかすぐに思ってしまう私です。

しかーし、小三治さんは趣味多彩な方らしく、かつてはバイクを乗りまわし、
現在もスキー(お上手です)や歌、その他にも色々とあくまでも真面目に遊んで
おられる様で、ガス抜きがちゃんとできてはるんですね。
プライベートな姿も違う意味でカッコイイ小三治さんです。
(無精髭をはやしてはる姿がオトコマエやったなぁ。)

そんな真面目な小三治さんも入船亭扇橋さんと一緒にいる時は調子が違ってて、
このコンビネーションが実に面白い。入船亭扇橋さんはイキな方やなぁ。

印象的だったのは、弟子の襲名披露でのあいさつ。
笑いはもちろん、胸にじわっとあたたかいものが残る様な。
弟子を手取り足取り教える事はしない、形じゃなくこころ、
そして志なんだという小三治さんの哲学が、垣間見える。

いい噺家の落語をもっともっと聴きたくなる映画です。

第七藝術劇場にて鑑賞。
 
↓こちらはトークショー。まくらのあの独特な面白みからいって期待できそう。

柳家小三治トークショー 1 〜めりけん留学奮戦記柳家小三治トークショー 1 〜めりけん留学奮戦記
(1996/12/01)
柳家小三治

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