ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

フィッツカラルド

フィツカラルド [DVD]フィツカラルド [DVD]
(2001/09/26)
クラウス・キンスキークラウディア・カルディナーレ

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監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
(1982年 西ドイツ)

【ストーリー】
19世紀末の南米ペルー。カルーソのオペラに感動したフィッツカラルドは、
アマゾン川の上流にオペラハウスを建てようと決意する。
そのためにジャングルの奥地にゴム園を造ろうとするが…。
(チラシより転記させていただきました)

圧倒!されました、そのはかりしれないエネルギーに。
色んな意味ですごい。

ケイブルホーグ・コレクションより今週末は、この作品と
「ハネムーン・キラーズ」(1970年)を観る事ができました。

実はヴェルナー・ヘルツォーク監督作品、初めてです。
かつて、ニュージャーマンシネマのくくりでヴィム・ヴェンダース等と並び出てきてた
名前やなぁくらいしか知識が無くて。
同じく同監督作品にはかかせない存在らしい俳優クラウス・キンスキーの存在も
意識してませんでしたが、なかなかすごい人ですね〜。
この人、ナスターシャ・キンスキーのお父さんなんですね。
(ちなみにロシア系ドイツ人らしい)

フィッツ(キンスキー)の目はキラキラしているんですが、
狂気と紙一重のものが感じられます。怖いくらいイキイキとしているんです。
なんつーか、ドイツ人やのに計画性なしに無謀ちゃうん?と思ってしまう位
やる事が無茶ですなぁ。

この映画には、なんとなく可愛らしいユーモアも折り込まれていて嬉しい。
機関車の下のレールが残って笑顔で喜ぶ元従業員とか、フィッツの黄色い髪や服を
ものめずらしそうにさわる原住民とか。機関士をはじめ、周りの人物のキャラも
なかなかユニーク。

拳を握りしめながら映画を見たのも久しぶりかも。
船の上で過ごす夜の緊張感や、なんといっても船が山を登っていくシーン。
無事上がりきってくれ!と祈る様な気持ちで見ていた。
CGを駆使した小賢しい作品がちょっと好みからはずれるなぁと思っている今日このごろ、
このリアリティとスケールの大きさには普通に感動してしまう。

フィッツの暮らすイキトスという街は、実際19世紀末に欧米人が入植して
天然ゴムラッシュに沸いたらしいですが、原住民や有色人種に過酷な労働をさせて
欧米人だけが設けてた構図が見えてきます。
ちょっと冷静に考えたら、オペラハウスなんか造るよりも現地の子供が通える
学校を造ったりする方がよっぽど土地の人に貢献できると思ったりしてしまいますが、
フィッツにそんなまっとうな理屈は通用しないって感じでしょうか。
愛すべきアホですね。そんなフィッツに惚れ込んでる売春宿の女主人モリー役で
クラウディア・カルディナーレが出てます。この当時で40代半ばくらいやと思うんですが、
若い時と遜色なく美しく可愛い!

正直、この映画を撮る事自体が自然破壊やなぁ等と生真面目(?)な私はちらっと
思ってしまいましたね。今やったら撮影許可が出ないのでは?
ヘルツォークという人は、そんな事関係ないよーって感じにも思えますが。

それでも船の上で開かれたベルリーニのオペラ「清教徒」 のシーンには、
何かすがすがしさを感じてしまう。
モリーの笑顔がまぶしいんですけど、事のてん末をはたして彼女は知っていて
あんなにいい笑顔でいられるのかしらん?などと下世話な事を考えてしまった。

同監督作品「アギーレ・神の怒り」を見逃した事がつくづく悔やまれるなぁ。

シネ・ヌーヴォにて鑑賞。