ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

懺悔

監督:テンギズ・アブラゼ
1984年 ソ連(グルジア

【ストーリー】
偉人として慕われた市長(アフタンディル・マハラゼ)の墓を掘り起こした犯人が捕まった。
犯人のケテヴァン(ゼイナブ・ボツヴァゼ)は、法廷で過去の苦難を語り始める。
両親は無実の罪で捕らえられ、収容所で亡くなった。
真実を聞いた市長の孫トルニケ(メラブ・ニニゼ)はパニックにおちいってしまう。
(シネマトゥディより転記させていただきました)

「教会に通じていない道が、なんの役に立つのですか?」

テンギズ・アブラゼという監督の作品、初めてです。
どうみてもスターリンによる大粛清を思わせる内容。
この方、グルジア共和国出身(スターリンも)でこの映画を作らはったんですね。
製作時(1984年)、グルジアでのスターリン批判はどの程度行われていたのか
よくわかりませんが、出身地を同じとする監督がこの映画を作ったという事が嬉しい。
そして、時を経てこの作品が観られるという事に感謝したい。

なんとはなしに、大らかさというか、懐の大きさを感じさせる様な作品です。

市長役のアフタンディル・マハラゼという俳優さん、すごいですねー、恐いですねー。
眼鏡の奥のギラッと光る目がそして笑った口元が卑しすぎる!
けど、この市長、オペラを歌い上げ、二階から(!)立ち去る(息子や部下まで)方法も
あっぱれ!というユニークな所もあったりして。
他にも、時代が合ってない様な騎士達の存在や、夢と現実が交錯したシーン等、
不思議で幻想的な映像がちょいちょい出てきて、面白くもあります。
マハラゼさんは市長の息子役との2役ですが、その演じ分けも素晴らしい。

ケテヴァンがいる場所も不思議。教会をかたどったデコレーションケーキを
いくつも作りつづけ、それを無造作にほおばるおじさん(せっかくの教会が!)。
ラストもまたこのシーンが出てきて、市長が死んでから後のことは
ケテヴァンの想像だったのだろうかと一瞬思わせる。
ケテヴァンもまた、罪の子の一人なのですね。

『祈り』『希望の樹』に続く三部作の最後の作品という事なので、
ぜひ他の2作品も観てみたい〜。そう感じさせる力のある映画でした。

第七藝術劇場にて鑑賞。
ナナゲーさん、けっこう永い期間上映していただいてて助かります。明日からはプロジェクター上映らしいです。