ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

ホウ・シャオシェンの レッド・バルーン

監督:ホウ・シャオシェン
(2007年 フランス)
原題:LE VOYAGE DU BALLON ROUGE

【ストーリー】
パリに住む人形劇師のスザンヌ(ジュリエット・ビノシュ)は新作の準備で忙しく、
留学生のソン(ソン・ファン)に息子シモン(シモン・イテアニュ)の世話を
頼むことにする(シネマトゥデイより転記させていただきました)。

アルベール・ラモリス監督『赤い風船』に、「冬冬(トントン)の夏休み」
悲情城市」などのホウ・シャオシェン監督がオマージュを捧げたのがこの映画です。

ジュリエット・ビノシュはますますおばちゃん化が顕著で、この役にはまっていたかも。
中途半端に若い時はあの野太そうな所がキライだったけど、「ショコラ」あたりから
マダ〜ム役が板についてきているのか、そのあたりもあまり気にならなくなってきた。

そんなヒステリックでお疲れ気味のスザンヌと対照的なのは、ソン・ファン。
こちらは生活に負われていないせいもあるとはいえ、その静かで優しい所が
こちらの気持をおだやかにさせてくれる。
一度もアップがなかったソンさんだけど、アジア人特有の喜怒哀楽の判りにくい顔を
見るとなんだかホッとする。
一見存在感がなさそうな彼女がこの作品のキーにもなっていると思われます。

ところで、ホウ・シャオシェン監督は子供の使い方が上手いですね。
「冬冬(トントン)の夏休み」で子供がぬいぐるみ(やったかな?)に注射をする
シーンでは、心地よい眠りを誘うけど映画に退屈してる訳じゃ無いという
不思議な体験を初めてしたのを覚えています。
シモンのお昼寝シーンはちょっとだけそれに近いものがありましたねぇ。
映画の後半、スザンヌに対してシモンが言うセリフがめちゃくちゃかわいいし、笑えました。
なんかもぉ、スザンヌじゃないけどやたらハグしたくなります!

ドラマティックな展開は無いけれど、全体的にドキュメンタリーの様なカメラワークと、
演じ手達の自然体な雰囲気にいつしか引き込まれていきます(ビノシュも上手いですね)。
そういえば、ウィンドウ越しやウインドウに映った何かというシチュエーションが
ちょっと多かったですね。

平凡な毎日の営みが愛おしく感じてしまう、そんな気持を呼び覚ます作品。

第七藝術劇場にて観賞。