ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

水になった村 ☆

監督 大西暢夫
(2007年 日本)

第七藝術劇場にて鑑賞。

1957年、人口約1600人の岐阜県徳山村にダム建設の話が持ち上がり、
村の人々は続々と近隣の街につくられた移転地へ引っ越していく。
廃村したダム建設地を訪ねた写真家、大西暢夫と
可能な限り村で暮らし続けたいと戻ってきている老人たちの
15年間の交流をつづったドキュメンタリー。

自然破壊への警告とか、ダムの必要性を検証してみたりとか、
そんなドキュメンタリーではありません。
やがてはダムに水没する村。村全体が集団移転し、町に住宅をあてがわれた人々。
そんな中で少しでも故郷で過ごしたいと願い、村に戻って暮らす人々暮らしぶりを
淡々と撮り続けています。

最初に登場される徳田じょさんをはじめ、村で生活する人はほぼ自給自足。
ここまで自然との調和がとられている生活は、
もはや私達には大変めずらしいものになってしまっている事実に気付かされます。

電気も水道もガスもない倉庫(バラック)で一人暮らしをしている老女が
気持ちよさそうに薪でわかしたお風呂につかるシーン。
「こんな気ままな生活をさせてもらって本当に幸せだ。
こんなに幸せでご先祖様に申し訳ない。」そう言う笑顔が素晴らしい。
日々の生活の恵みに感謝し、その時を楽しんでいる彼女を見て、
こみあげてくるものを感じた。あーこれが本当の心の豊かさかもしれない。

現在の水没して存在しない村の姿を冒頭で見ているだけに、
かつての村での人々の笑い声や明るさが悲しく、せつなくなります。

登場する人達のふる里に対する愛惜の念がひしひしと伝わってきて、
胸がいっぱいになりました。もう一度観たい作品。