ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

明るい瞳

監督 ジェローム・ボネル
(2005年 フランス)

【物語のはじまり】
フランスのとある村で兄夫婦と同居しているファニー(ナタリー・ブトゥフ)は、
予測のつかない行動で、周りの人達からなかなか受け入れてもらえない。
ある日、兄夫婦と対立してまったファニーは家を飛び出す。

第七藝術劇場にて鑑賞。
以前、七藝で予告編を観てから楽しみに待っていた作品です。

「あー奥さん、化繊は高温でアイロン当てたらあきません!」と思わず心の中で言った
冒頭のシーン。ここからファニーのいつもの行動がちょっと想像できました。
ハタキがけしているシーンも常識派(?)のワタシは、何か割らないかと
少しハラハラしてしまったり(でも可笑しかったけどね)。

前半はファニーが精神的に不安定で社会や家族から疎外感を感じているという
描写がされていて、痛々しくもありちょっとユニークでもあります。
(「君とボクの虹色の世界」のクリスティーンを思い出しました。
クリスティーンの方がもっと楽観的ですが。)

そんな彼女が、父親の墓参りに訪れた森で言葉の通じない木こりと出会って。。。
というちょっとおとぎ話の様な展開です。
もちろん「幸せに暮らしましたとさ。めでたし〜」のラストという訳ではなくて、
あくまでも観るものに想像させるお話なんです。

森の番小屋のシーンがいいんですよ。ファニーでなくても、
のびのびと深呼吸したくなる感じ。このあたりはほとんどセリフもないので、
鳥のさえずりや、水の音が美しい静けさの中で心地よく響く。
そして、うまく弾けないくていらいらしていたピアノが
何故かここではなめらかで素敵な調べ。
シューマンのピアノ・ソロ曲が印象的でした。
ファニーがピアノカバーの中で弾く姿も可愛い。
オスカー役のラルス・ルドルフも、現代の人とは思えない不思議な雰囲気でした。

見渡す緑の中、気持ちのいい日ざしの中でドラム缶風呂なんてゼイタクですよね。
白と赤でペイントされた小屋の前のグリーンのドラム缶や、
キャンディーカラーの沢山の椅子、サラッとしたファニーのワンピース等、
可愛いディテールも楽しい作品。