ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

エディット・ピアフ 愛の讃歌

エディット・ピアフ~愛の讃歌 サウンドトラックエディット・ピアフ~愛の讃歌 サウンドトラック
(2007/09/05)
エディット・ピアフ

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監督 オリヴィエ・ダアン
(2007年 フランス/イギリス/チェコ)

【物語のはじまり】
1915年、パリで生まれたエディット(マリオン・コティヤール)は、
祖母が経営する娼館で育てられる。
その後、軍隊を退役した大道芸人の父に引き取られ、人前で歌う事を覚えるが。。。。
「ばら色の人生」、「愛の賛歌」などで有名なフランスの国民的シャンソン歌手、
エディット・ピアフの生涯を描く伝記映画。

TOHOシネマズなんばにて鑑賞。今さらですが、ネットで座席指定して
チケットが購入できるって便利!ですね。余裕をもって劇場に行けるので
ラクチンです。東宝と違って、松竹系の映画館だと詳細な座席指定ができないのが、
ちょっと残念ですが。

さて、エディット・ピアフのこの映画、偶然にも彼女が実際に亡くなったとされる
10月10日に鑑賞する事になりました。
素晴らしい作品! 観終わった後なかなか現実に戻れない、
余韻にひたっていたい映画でした。

1900年代初頭、パリ下町のゴミゴミしたシーンから、エディットのおかれている
劣悪な環境がひしひしと伝わってきます。それでも、この時代のパリ(またはロンドン)の
生活を感じさせるシーンってなぜかウキウキしてしまう。
その後の、ノルマンディーの娼館では、祖母の静かな演技が印象的。
エディットを甘やかす事はないけれど(やがて来る別れを予感しての事か?)
愛情を持って見守っている彼女や、猫かわいがりする娼婦達にホッとします。
過酷な生活に絶望しているはずの娼婦達ですが、
ティティーヌの歌が可愛いくってクスッと笑えたりして。また、彼女達の信心深さに
も、神に助けを求める事しかできない無力さが伝わってきて、心が痛くなります。
エディットにとって、この時代の経験が大きく影響しているのではないでしょうか。

父親と大道芸で回っているうちにエディットは歌う様になるんですが、
少女時代に初めて歌うシーンが! これもまた、いいんです。
あの子役の澄んだ瞳、そして声には少なからず感動しました。

そして、大人になってからのエディットを演じるマリオン・コティヤール
彼女の圧倒的な熱演。数少ない機会でのみ私が知っているピアフのイメージ
そのもの(ちょっと誇張気味ですが)。
ところで、彼女に見い出されて恋人関係でもあったというイヴ・モンタンとの
エピソードが出てきませんでした。待ち構えて観ていたので、
ちょっと肩すかしでしたが、マルセルとの関係をクローズアップするためにもまぁ、
どちらでもいい気もします。マレーネ・デートリッヒとのシーンはなんか感激したし。

この映画ではもちろん、傍役の人達も素晴らしい。ジェラール・ドパルデューをはじめ、
魅力的で個性的なフランス俳優陣の層の厚さを感じさせる作品でもありました。
エディット父親役を、大好きなフレンチドラマ「ジュリーレスコー」の
ヴェイユ(ジャンポール・ルーヴ)が演じていたのも嬉しい発見です。

また、現在と過去が交錯する作り方も個人的には好みでしたね。
絶望的になり過ぎてしまいがちなシーン等を新たな視線で観る事ができるきっかけにしたり、
物語に膨らみを持たせる事ができて良かったと思います。
最後の回想シーン等も感慨深いものがあって。

とにかくエディットの歌に圧倒され続け、どっぷりその世界に浸ったので
140分という時間は全く長く感じませんでした。
久しぶりに観た映画らしい正統派映画です!