ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

カポーティ

カポーティ コレクターズ・エディション
監督 ベネット・ミラー
(2005年/アメリカ)

【物語のはじまり】
1959年、作家トルーマン・カポーティは小さな新聞記事に目を留める。
カンザス州で一家4人が惨殺された事件だ。これを次の小説の題材にする為、
彼は幼馴染みの女流作家ネル・ハーパー・リーを伴い現地に向かう。。。

昨年、梅田ガーデンシネマで観たこの作品は、
トルーマン・カポーティの傑作『冷血』をベースにしています。

ひとことで言ってしまうと地味な映画です。そして重い。
反面、いろいろな事を感じさせる興味深い作品でした。

映画の始まりは、恐いんです。観ている側は殺人事件のあった事を
知ってるわけですから(全く予備知識のない人はどうかわかりませんが)、
カンザスの田舎、広々として静かな朝の風景が、嵐の前の静けさというか、
妙な緊張感を観るものに感じさせます。

最初のうちは、フィリップ・シーモア・ホフマン演じるカポーティ
奇異なしぐさやしゃべり方についつい目がいってしまいました。
ホフマンはカポーティ独特のジェスチャーやクセを徹底的に研究したと、
どこかで見たので、本当にこんな感じの人やったんかなぁと、
そのきどった態度に何か、カポーティが抱えていたコンプレックスの大きさを
感じさせられました。

そのカポーティが殺人犯ペリー・スミスとの間に友情のようなものを感じはじめ、
また、自分を投影して見ていくようになるんです。
自分の小説を完成させる為には、ペリー・スミスの死刑が確定して欲しいと思う反面、
死刑を阻止する為に動く自分も存在している。
そんなカポーティの心の中の葛藤を、ホフマンは見事に演じていました。

また、幼なじみのハーパー・リー(『アラバマ物語』の作者)の役を
マルコヴィッチの穴」ではクールな女性というイメージだったキャサリン・キーナー
演じていました。いやーあとで調べるまで全然彼女とは気がつきませんでした。
フツーに善良な中年女性の役を、存在感を保ちつつすんなりとしてはって、
やっぱり上手い人ですねぇ。

ちなみにこの映画を見た帰り、まだ読んでいなかった「冷血」を買って帰りました。