ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

サン・ジャックへの道 ★

サン・ジャックへの道

梅田シネリーブリで「サン・ジャックへの道」を観る。

【物語のはじまり】
母親の遺産を相続するため、仲の悪い中年の兄妹、ピエール、クララ、クロードの三人は
キリスト教の聖地・スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼の旅に出る羽目に。
旅の道連れには他にも各々の事情を抱えた人達がいた。。。

『女はみんな生きている』の女性監督コリーヌ・セロー最新作。
いやー、おもしろかったし、深呼吸したくなるような気持ちのいい映像、
いろんな意味でいい映画でした。

それにしてもこの人達のおしゃべりな事。まるで話すことが活力の源のようです。
長男のピエールなんかは、自分の事を棚に上げて
「誰も私を相手にしてくれない(話してくれない)」などとすねたりする。
しかし、黙っていてもわかり合えるなんて嘘だと思うし、
あったとしてもごく親しい間柄での事。
思っている事を口に出して言う国民性はいいですね。
(実際そんな人達に囲まれて生活するのは辛いものがあるかもしれませんが、
映画の中では相手の批判なんかでもひとひねりした言い方で、
ウィットに富んでいるというのでしょうか、辛口のユーモアも笑えます。)

旅が深まると共に、登場人物のひとり一人に愛着が湧いてきて、
映画を一層興味深いものにしてくれます。
特にアラブ系の少年ラムジィ君の無垢な存在。。。
旅に参加している若者4人共があまりにも純粋で悪気がなくて
ありえない気もしますが、映画の中では気持ちよくすんなり受け入れられる存在でした。
そして、欠点だらけの大人、三兄弟達にも心の変化があらわれて。
人間を肯定しているあたたかい映画ですね。

世界遺産に登録されているサンティアゴ巡礼の道、行った事もないのに
何故かノルタルジィを感じる、そこにいるだけで涙が滲んできそうな風景が
いたる所に写し出されていました。いつか行きたい。