大阪では、ソメイヨシノが終わって八重桜が盛り
今日から始まった造幣局の通り抜けで見られます ♪
「リリーのすべて」〜妻の愛に涙する〜
公式サイト:http://irisapfel-movie.jp/
※音声が出ますのでご注意ください
監督・製作:トム・フーパー
製作:ゲイル・マトラックス / アン・ハリソン / ティム・ビーヴァン / エリック・フェルナー
脚色:ルシンダ・コクソン
原作:デヴィッド・エバーショフ
製作総指揮:リンダ・レイズマン / ウルフ・イスラエル / キャシー・モーガン / ライザ・チェイシン
撮影監督:ダニー・コーエン
プロダクションデザイン:イヴ・スチュワート
編集:メラニー・アン・オリヴァー
衣装デザイン:パコ・デルガド
メイクアップ・ヘアデザイン:ジャン・スウェル
音楽:アレクサンドル・デスプラ
(2015年 イギリス/ドイツ/アメリカ制作 120分)
原題:THE DANISH GIRL
※ネタバレを含みます
【ストーリー】
1926年、デンマークのコペンハーゲン。
アイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)は、風景画で才能を高く評価されている気鋭の画家
彼ほど有名ではなかったが、妻のゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)も肖像画を専門にする画家として活動していた
(公式サイトより転載させていただきました)
エディ・レッドメインよりも、相手役&演じる女優さんの方が断然輝いてる〜
これって「博士と彼女のセオリー」と同じパターンじゃないですか!
前半はちょっと単調に感じて、それほど引き込まれませんでした
世界で初めて性別適合手術を受けたとされるリリー・エルベ
その生涯を基に書かれた作品(フィクション)の映画化です
なので、夫婦の関係性が実際はどうだったか知る由もないのですが
ここで描かれる妻ゲルダの献身的な愛情に後半、胸が熱くなります。
だって、考えてもみてください
自分が愛した夫が「女性になりたい」「男性を愛したい」「その人の子供を産みたい」などと、のたまう
こんなの「やってられない!」です
ちゃぶ台、ひっくり返したくなります
しかし、ゲルダは違うのです
最初こそ夫とヘンリクの関係を問いただしてましたが、次第に彼自身を理解し協力しようと努めます
ヘンリク役のベン・ウィショー、存在感がありすぎて正直エディがかすんでしまった(笑)
女装した夫の姿に触発され、画家としての新境地が開けたゲルダ
しかし、愛し愛されたアイナーという存在が消滅してしまう事への絶望感が切ない
「その人の幸せを第一に考える」というのが、人を愛するという事
それがわかっていても、現実的にはなかなか難しいですよね
包容力ある女性の物語で、複雑な妻の心情が染みる〜という点で「博士と彼女のセオリー」を観た時と同じような気分になります
一方、リリー(アイナー)が妻ゲルダをどう愛していたのかが、あまり伝わってこなかった
というか、描いていなかった?!
最終的に女性になる決心をする彼ですが、自身の真の願望にとまどい、体と心の不一致に悩む、そんな過程があっという間でした
まさに、自分の欲望にまっしぐら!という感じです
それだけにリリーには、かなり共感しずらい〜
元々エディは、存在感のある女優さんの傍らにそっといる感じが似合うと思います
「イエロー・ハンカチーフ」ではクリステン・スチュワート
「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズ
「レ・ミゼラブル」でアマンダ・サイフリッド
と、各女優を引き立てているような気がする
中身は全然違うけどトランスジェンダーがらみでは、「彼は秘密の女ともだち」のロマン・デュリスの方が一枚も二枚も役者が上だな〜
なんて、個人的には思ってしまいました
そんな訳で、アリシア・ヴィキャンデルの良さで見る映画だと思います
ラスト、ハンス(マティアス・スーナールツ)と共にゲルダが見るデンマークの風景が、一番印象的で美しかった
TOHOシネマズ 梅田 にて鑑賞
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その他
3月第4週・4月第1週の上映作品(大阪市内)で気になる映画
ここのところ、出かける際は帽子に眼鏡+マスクという姿で、銀行やコンビニに入る時にちょっと抵抗を感じます(笑)
花粉の時期が早く終わってくれないかな〜
「アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー」〜人生の先輩に教えられること〜
公式サイト:http://irisapfel-movie.jp/
※音声が出ますのでご注意ください
監督・撮影:アルバート・メイズルス
製作:ローラ・コクソン / レベッカ・メイズルス / ジェニファー・アシュ・ラディック
共同製作:ポール・ラブレース
製作総指揮:ドリーン・スモール
編集:ポール・ラブレース
撮影:ネルソン・ウォーカーIII / ショーン・プライス・ウィリアムズ
録音:マイク・カラス
音楽:スティーブ・ガン / ジャスティン・トリップ
タイトル:スティーブ・パワーズ / ジェニファー・バナイ
(2015年 アメリカ制作 80分)
原題:IRIS
※ネタバレを含みます
【ストーリー】
94歳にして多くの有名デザイナーたちからリスペクトされ、今なおNYのカルチャーシーンに影響を与える、アイリス・アプフェルのドキュメンタリー映画
(公式サイトより転記させていただきました)
「センスがなくても幸せならいい」
そーなんですよ!
別にお洒落じゃなくても、幸せならいいんです
何に喜びを見いだすか、価値観は人によって違う訳ですから〜
そういった名言がポンポン飛び出す、スーパーばあちゃんアイリスのドキュメンタリー
前回見た映画の主人公もそうだったけど、ボジティヴな人は見ていて元気をもらえます
それがフィクション(つくりもの)でないなら、なおさらです
アイリスを見ていて、思ったこと
人にどう思われるかじゃなく、自分がどうしたいかという事が基本
そして、自分したいと思う事は躊躇なく実行する意思の強さがある
これって当たり前のようでも、結構難しいんじゃないかなぁ
私自身も年をとった今は図々しくなって、好きなように振る舞えるけど、若い時は周りに左右されてしまう事も結構あった気がする
彼女はまた、どん欲でもあります
様々な美しいモノに興味を持ち、自分のコレクションにします
そして、それが安価であっても必ず値切ります(笑)
アイリスが手仕事によってつくられたモノに惹かれる傾向は、彼女の育った時代に関係しているように感じます
その人生の前半を過ごしたのは、ファッションといえばオートクチュールその他オーダーメイドのモノしか存在しない時代
経済的にも恵まれ、こういった丁寧に作られたモノをちゃんと見てきた人達は、やっぱり目が肥えてるんだろうなぁと想像します
同じくドキュメンリー「アドバンスト・スタイル」(2014年)は登場する人達のファッションがとても参考になったけど、この映画はファッションとしてのスタイルよりも、アイリスその人の生き方のスタイルが面白かった
「自分を美人だと思ったことは、一度もない。
私みたいな女は、努力して魅力を身につけるの」
彼女はパワフルなんだけど、90歳という自分の年齢もちゃんと受け止めていて、時には疲れた顔も見せる
そこもまた、ナチュラルで良いと思う
アパートの部屋は縫いぐるみなど可愛いものが山のように溢れているのに、何故か統一感があるのも不思議
どうしたって細胞は日々衰えていくわけで、それを認識しながらも精一杯毎日を生きていかなきゃ!と、こういう先輩は思わせてくれるんです
テアトル梅田にて鑑賞
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杉花粉アレルギー&黄砂やPM2.5のせいなのか、鼻水と涙で顔がもうグチャグチャです!
でも大丈夫、いつもとたいして変わりませんから(笑)
「これが私の人生設計」 〜ドタバタコメディ・イタリアお仕事事情編〜
公式サイト:http://korewata.com/
※音声が出ますのでご注意ください
監督・原案・脚本:リッカルド・ミラーニ
原案・脚本:パオラ・コルテッレージ / ジウリア・カレンダ / フリオ・アンドレオッティ
原案:イヴァン・コトロネーオ
編集:パトリツィア・チェレザーニ
撮影:サヴェリオ・グアルナ
美術:マウリツィオ・レオナルディ
衣装:アルベルト・モレッティ
音響:アドリアーノ・ディ・ロレンツォ
音楽:アンドレア・グエラ
(2014年 イタリア制作 103分)
原題:SCUSATE SE ESISTO!
※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください
【ストーリー】
建築家として世界各国で華々しいキャリアを積んできたセレーナ(パオラ・コルテレージ)は、ふと自分を見つめ直し「新たなステップ」を踏み出そうと故郷のローマに帰ってきた。
しかし、イタリアの建築業界は男性中心の社会で、ろくな仕事にも就けず貯金も底をつく。
(公式サイトより転載させていただきました)
超ポジティブなヒロイン物のコメディ
現NHK朝ドラのヒロインも“びっくりポン”な程前向きですが、こちらの主人公セレーナもなかなか、いやそれ以上です
イタリアのドラマなどを見てよく思う事ですけど、ここでも日本人の感覚では「喜怒哀楽がやたら激しい」人物たちが登場します
特にセレーナのおばさんが(笑)
演出もいちいち大げさで、フランチェスコの登場シーンがやらた長い
あの流し目! スチームの乱舞!
このあたりの強引さがイタリアっぽくて、もう笑うしかない
最初はちょっと引いて見てたけど、途中から自然と笑ってました
実在する女性建築家グエンダリーナ・サリメイのリフォームプラン「緑の空間」が、ローマ郊外の公営住宅に採用された事にヒントを得て創られたらしい
映画では大げさに表現されているとしても、そんな事が話題になる位だからイタリアって日本以上に男社会なのかな〜
そういう事情をコメディ仕立てで描いていて、特に女性にはスカッとする映画じゃないでしょうか
大阪在住と嘘をつくために、モニターに映る背景に置いたのはお城の写真と桜の造花
こんなチープな演出にも違和感を感じないあたり、見ているうちに私の感覚が麻痺してるのかも(笑)
レストランのシーンではローマの伝統料理の事が少しわかったり、ジュリアっていう名前が古くさい感覚とか、色々面白い。
帰国子女の友達いわく「ジュリア」という名前、私達が中学生の頃はアメリカで結構イケてる名前だったらしいんだけど
月日が経つってこういう事なんですね。。。と、本題から脱線してしまいました
ゲイで、ハンサムで、優しくて、気が合って。。。なんて、フランチェスコはある意味女子の理想の友人像かも
他のゲイ達も可愛らしくて、特にボンテージ着てたぽっちゃりさんが礼儀正しくて笑った
可愛いと言えば、フランチェスコの息子も眼鏡姿がキュート★だったな
大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
ナショナル・シアター・ライヴ「夜中に犬に起こった奇妙な事件」
上映時間:約2時間51分
原作:マーク・ハッドン(ガーディアン賞受賞)
脚色:サイモン・ステファンズ
演出:マリアンヌ・エリオット
主演:ルーク・トレッダウェイ
【概要】
並外れた頭脳をもつ15歳のクリストファーは、その才能を活かして隣人シアーズさんの犬を殺害した犯人を探そうとする。2013年のオリヴィエ賞で作品賞を含む主要7部門(最優秀プレイ賞、最優秀演出賞(マリアンヌ・エリオット)、最優秀主演男優賞(ルーク・トレッダウエイ)、最優秀助演女優賞(ニコラ・ウォーカー)ほか)を独占し、ブロードウェイ公演では第69回トニー賞プレイ部門最優秀作品賞や最優秀演出賞などを受賞した。日本でもV6森田剛主演で上演され、高い評価を受けている。
(公式サイトより転載させていただきました)
2014年から(たぶん)始まったナショナル・シアター・ライヴ
これまで見ることができたのは
『フランケンシュタイン』
『コリオレイナス』
『ザ・オーディエンス』
『リア王』
『オセロ』
『ハムレット』(ベネディクト・カンバーバッチ版)
残念ながら見逃した作品は
『ハムレット』(ローリー・キニア版)
『欲望という名の電車』
『二十日鼠と人間』
『スカイライト』
『宝島』
そして、今回の作品
今迄見た中で、一番好きです!
ヘレン・ミレン主演の『ザ・オーディエンス』も素晴らしかったけど、
これは何ていうか、心の中心にズドーン!ときました
気が早いけど、今年一番の作品はこれかもしれません
主人公クリストファーは父親と二人で暮らす15歳の少年
利便性のため一般に「自閉症」という名称で呼ばれる、そんな症状を持つクリストファーが、ある夜犬の死体を発見したことから始まる冒険が描かれています。
観客である私達の冒険心やワクワク感はくすぐられますが、当のクリストファーは冒険なんてしたくなかったでしょうね(笑)
彼は、人の表情から気持ちを推し量る事ができない、見たものの情報が一度に頭に入ってきてしまう、など普通の人とはちょっと違う個性を持っています。
けれども数学や物理は、大学入学試験である上級試験を受けるくらい得意です。
そんな彼が語る言葉やステージ上の演出で、クリストファーの頭の中のイメージが鮮やかに目の前に差し出されたかのような感じなのです。
体験型というか、クリストファーの気持ちを追体験しているような感覚です。
脳で直接感じるとでも言えばいいかな。。。
クリストファーの語る言葉もいちいち面白いし、宇宙空間を漂う感覚や、電車のゆれなど、フィジカルな表現も素晴らしい。
原作は未読だったので、早速図書館で借りました。
クリストファーの語る言葉が面白くて、一気に読んでしまった。
お芝居は結構、原作そのまんまという印象です。
可笑しくて、心が痛い
見ているうちに、段々クリストファーに共感していきます。
理解することはできていないのだろうけど、彼と一緒に衝撃をうけ、彼と一緒に泣きました。
字幕が相変わらず変だったけど(苦笑)、素敵な舞台です。
主演のルーク・トレッダウェイも素晴らしかった。
どう見ても、15歳の少年クリストファーでしたよ。
イギリスの演劇界は狭いけど、層が厚いというか深いな〜
今後(4月に)上映があるのは、吉祥寺オデヲンだけのよう。
ぜひ、関西でアンコール上映して欲しい、私ももちろん沢山の方に見て欲しいと思う舞台です。
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2月に見た映画 ちょこっと感想
振り返ると、2月は新作映画をほとんど見てませんでした
鑑賞順で、少しだけ感想を ネタバレしてます
「キャロル」
公式サイト:http://carol-movie.com/
※音声が出ますのでご注意ください
ケイト・ブランシェット主演ですから、いそいそと見にいきました!
ケイトのゴージャスで上品なたたずまい、ルーニー・マーラの可愛さ、美しいファッションや映像など、見るべき点は多いのですが。。。。
ラブ・ストーリーって何故か乗れない時があって、難しいですね
私には、なんだか奇麗すぎてしっくりこなかったのです
女性同志の恋愛物語でも「アデル、ブルーは熱い色」(2013年)なんかは、文字通り熱くなったんですけどね〜
「サウルの息子」
公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/saul/
※音声が出ますのでご注意ください
凄まじい
第二次世界大戦時、アウシュビッツのユダヤ人収容所
同胞の人達をガス室に送り、その後の死体処理や清掃などを行う「ゾンダーコマンド」と呼ばれるユダヤ人達の部隊があったのです
数ヶ月間にわたる任務の後、彼らも抹殺される運命にあるので、反乱を起こそうとするのですが。。。。
何も考えないよう、見えるものを見ないようにする
最初の20分で主人公について想像したのは、そんな事でした
見ているこちら側でさえ、感覚を麻痺させないと惨過ぎる状況
画面の端にボンヤリと映る死体の数々を、なるべく見ないようにしている自分がいます
次々と殺しても追いつかないくらいのユダヤ人が大量に輸送されてきて、殺処分に追い立てられるドイツ兵達の精神状態も異常だったと思われます
あの時代のドイツ人(やフランス人やハンガリー人やその他のユダヤ人を迫害した人達)のほとんどが悪人だった訳も無く、人間というものがいかに置かれた状況によってどうにでもなる存在なのかと、今さらながら寒気がします
監督はタル・ベーラの助監督だった人らしく、なるほど余計な装飾もなくシンプルな構成で、見る者の心を揺さぶる映画でした
しかし、しんどい映画です
「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁」
公式サイト:http://sherlock-sp.jp/
※音声が出ますのでご注意ください
イギリスではTV放送されたドラマですから、原則ドラマのファンの人が見に行くモノだと思います
BBCのドラマ「SHERLOCK」を知らない人が見ても、わかりにくい作品なんじゃないでしょうかね〜
ここら辺、配給会社の宣伝方法に問題があるような気がします
私は、面白かった! ので、初日と先日の2回見に行きました
しかし、本編の前後の流される映像は特に必要なかったかな
スティーヴン・モファットとマーク・ゲイティス、二人のシャーロック・ホームズおたくが、少々悪ノリしてやりたい事をやった、という印象
ライヘンバッハの滝のシーンが(笑)
あそこにワトソンを登場させるなんて禁じ手という気もしますが、個人的には一番ウケました
マイクロフト(恰幅のいい彼の太い指が可愛い!)の、モリアーティをウィルスに例えたセリフでピン!ときたのですが、入れ子構造のような話の展開で、結構ややこしい
いずれにせよ細かい事はどうでも良くて、いかにクスッと笑えるツボがあるかが、楽しめるかどうかの別れ目だと思います
ルパート・グレイヴスには、やっぱりコスチュームプレイがしっくりきます
実はドラマなどで現代劇に出てる彼にちょっとした違和感を感じてたのですが、今回は私の中ですごいフィット感(笑)
話し方も現代版とは少し違ったように感じました
それは、ホームズ&ワトソンにも言える事なのですが
ベネディクトの声、映画館だとさらに聞き惚れてしまいます〜
そして、ヴィクトリア朝時代のワトソンくんはよりコミカルで可愛い(はあと)
しかし、鹿撃ち帽はもういい気がします。こちらはお腹いっぱい
他にも、ナショナル・シアター・ライヴで「夜中に犬に起こった奇妙な事件」を鑑賞したのですが
こちらはすこぶる素晴らしかったので、後日レビューをあげる予定です、たぶん
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「市川崑 光と影の仕事」〜若尾文子さん出演作を中心に〜
3月11日まで上映中の「市川崑 光と影の仕事」
ちょこっと感想を(鑑賞順)
「日本橋」
1956年/カラー/111分/スタンダード/大映東京
原作:泉鏡花 脚本:和田夏十 撮影:渡辺公夫 美術:柴田篤二 音楽:宅孝二
【淡島千景・山本富士子主演で、泉鏡花の戯曲を映画化
サイレントでも溝口健二監督によって映画化されているようです】
姉御肌で気っぷのいい雰囲気を醸し出す、お孝役の淡島千景さん
対照的に、清葉役の山本富士子さんは楚々とした美しさ
そして、若尾文子さんがとっても初々しくて可愛らしい!
この時代だからこその、女優さん達の存在感が素晴らしい
話の展開にはちょっとついていけない部分もあったけど
日本橋の芸者の世界、この雰囲気は良いですね〜
なんとも摩訶不思議な映画でした
一部、生理的に気持ち悪いシーンもあるので、ご注意ください
泉鏡花といえば、私「高野聖」で挫折してから全く読めてません。。。
映画化されてると、少しだけその世界を覗き見したような気になれます
「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」
1959年/カラー/87分/シネスコ/大映東京
原作・脚本:久里子亭 脚本:舟橋和郎 撮影:小林節雄 美術:下河原友雄 音楽:塚原晢夫
【やもめの父(佐分利信)の事を思い、父が決めた婚約者との結婚を断るキャリアウーマンの和子(若尾文子)だったが。。。】
ムムッ、オープニングの曲はまるでフランク永井さんの「有楽町で逢いましょう」のようなムード歌謡で、ちょっと戸惑ってしまいました
「父を心配し嫁に行けない娘」という某監督の映画でも御馴染みのストーリーですが、最終的に主人公の選ぶ道が現代的で後味が良いです
スチュワーデスの妹・通子役に野添ひとみ、その妹からアプローチされる学生役が川口浩と御馴染みの顔ぶれで、このあたりのノリは軽いです〜
当時のJALに、あんな落ち着きのないスチュワーデスがいたとは思えないけど(笑)
京マチ子さんは、仕事も結婚も自分の欲しいものはガッチリ手に入れるしたたかな役で、若尾&野添コンビと共演した「婚期」のボーッとした義母役よりもずっとしっくりきてる気がします。
そういえば、「温泉女医」(1964年)の丸井太郎さんもちょこっと出演されてました
梅子の結婚式で義兄(船越英二)が半次郎(菅原謙二)と張り合うシーンなどコミカルで楽しく、結構好きなタイプの映画ですが、とにかく出てくる男達が皆、情けない〜
それに比べて女達の生命力溢れること!
メガネっ子の若尾さんも可愛らしくイキイキしてて、ファン必見です
「女経」
1960年/カラー/100分/シネスコ/大映東京
三者三様の悪女が主人公のオムニバス映画で、第二話だけが市川崑監督作品です
第一話「耳を噛みたがる女」監督:増村保造 原作:村松梢風 脚本:八住利雄 撮影:村井博 美術:山口煕 音楽:芥川也寸志
【隅田川に停泊するダルマ船で家族と暮らす紀美(若尾文子)は、銀座のホステス
キャバレーの客から巻き上げた金を株に投資するしたたかな女だが、会社社長の御曹司(川口浩)の事は本気だった】
今作の若尾さんは、男を手玉にとる蓮っ葉な女の役
いけしゃあしゃあと嘘をついても、なんか可愛いんですよね
しかし、最終的に好きな男性の事は大切に思って身を引く、というなんとも都合のよいわかりやすいストーリー
それでもセンチメンタルには流れない、ある種ドライな若尾さんの魅力が楽しめます
第二話「物を高く売りつける女」監督:市川崑 原作:村松梢風 脚本:八住利雄 撮影:小林節雄 美術:渡辺竹三郎 音楽:芥川也寸志
【流行作家の三原(船越英二)は、海岸で見かけた爪子(山本富士子)に惹き付けられる】
山本富士子さん、最高!ですね
前半のとってつけたようなきどった話し方(笑)から、後半のサバサバした様子への変貌といい、笑わせてもらいました
「小説家の三原が失踪か?!」という最初のシーンは、画面がグルグル回ってちょっと気持ち悪かったのですが
爪子の部屋を訪ねてきた喫茶店勤めの女の子が、またまたポップな軽いノリの野添ひとみさん(笑)
「この商売はね、私くらいずば抜けて美人じゃないと成り立たないんだよ」という爪子のセリフに納得、ニンマリしてしまいます
頰被りをしてアイロンがけをしている爪子は、突然訪ねてきた三原を見て大あわて(可愛い!)
前半の不気味な雰囲気とコミカルな後半とのギャップも面白いし、今さらですが船越英二さん、息子さんとは格が違いますね〜
第三話「恋を忘れていた女」監督:吉村公三郎 原作:村松梢風 脚本:八住利雄 撮影:宮川一夫 美術:柴田篤二 音楽:芥川也寸志
【先斗町の芸者だったお三津(京マチ子)は、今は京都の宿屋の女将におさまっている
ある日、死んだ夫の妹(叶順子)が吉須(川崎敬三)と結婚するため金を借りにきた】
京マチ子さんは、女将とかマダムとか、やっぱりこういう「くろうと」の役がよう似合いはる〜
そして、中村鴈治郎さん演じるお三津の義父が、やっぱりか!という感じでイヤらしいスケベなおジイです(笑)
こういう役をやらせたら、右に出る者はいませんね〜
普段からお金に厳しいお三津ですが、元彼の根上淳の言葉には絆されそうになります
他の二話がカラッとしていたのと対照的に、しっとりとした京都の映像と共に情緒的な雰囲気に包まれています
「おとうと」(デジタル復元版)
1960年/カラー/98分/シネスコ/大映東京
原作:幸田文 脚本:水木洋子 撮影:宮川一夫
美術:下河原友雄 音楽:芥川也寸志
【17歳のげん(岸恵子)は、何かと問題を起こす弟・碧郎(川口浩)の面倒を見ていた。
小説家の父(森雅之)の後妻となった継母(田中絹代)との関係が上手くいっていなかったからだ】
冷淡な義母と無責任に息子を甘やかす父親のせいなのか、グレてる割に甘えん坊の弟
そんな弟が若くして亡くなってしまう
ストーリーだけ追うと悲劇なんですが、水木洋子さんの脚本が良いのか、悲壮感がなくて面白い
主演の岸恵子さん、これまで上手いと思った事がないので少し心配でしたが、それなりに良い感じです
森雅之さんがまたも煮え切らない役で、見ていてイライラさせてくれます(笑)
田中絹代さん、思い込みの激しいイケズな役がすごく上手いですね
この方、けなげな役よりもこういう性格の悪い役の方が、私の中でしっくりきます
そして、少ししか登場しないのに、岸田今日子さんの存在感が(笑)
また、この頃の江波杏子さんは美しいです〜
という訳で、主役二人以外の俳優陣にばかり目がいってしまいました。
「炎上」(デジタル復元版)
1958年/モノクロ/99分/シネスコ/大映京都
原作:三島由紀夫 脚本:和田夏十、長谷部慶治
撮影:宮川一夫 美術:西岡善信 音楽:黛俊郎
【三島由紀夫「金閣寺」の映画化
吃音症の青年僧が驟閣に放火するに至るまでを描く】
1950年、実際に起きた金閣寺放火事件をテーマに三島由紀夫が創作した小説「金閣寺」
その小説を元に和田夏十が書いたオリジナル脚本は、小説とはラストが異なっています
三島のこの小説、評価が高いのはわかるのですが、読んでて暗くなるし正直好きじゃない本です
そこをベースにしている訳ですから、ずっと底辺に暗い何かが淀んでいるような、不穏な空気がまとわりつくような映画となっています
市川雷蔵という人はカッコイイ役の時はスター性があって良いと思いますが、アイラインも入れずに(笑)こういう暗い役だとあまりにも地味すぎる
いや、上手いんですけどね。もうちょっとどこかに魅力のある主人公でないと、見ていて辛い
北林谷栄、中村鴈治郎、仲代達矢など周りの役者も有無を言わせぬ上手さで、宮川一夫のカメラワークも文句無し
しかし、好きな映画とは言えない。。。と同時に、見ておいて良かったとも思います
後味の悪い映画って、往々にしてこういう気持ちを抱かせるのです
あと1週間を残すのみとなった市川崑映画祭ですが、今週は金田一さんが活躍するあのシリーズなどが上映されているようです
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