ゆるり鑑賞 Yururi Kansho

映画や海外ドラマ、たまに本の感想を基本ネタバレで

「これが私の人生設計」 〜ドタバタコメディ・イタリアお仕事事情編〜

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公式サイト:http://korewata.com/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・原案・脚本:リッカルド・ミラーニ
原案・脚本:パオラ・コルテッレージ / ジウリア・カレンダ / フリオ・アンドレオッティ
原案:イヴァン・コトロネーオ
編集:パトリツィア・チェレザーニ
撮影:サヴェリオ・グアルナ
美術:マウリツィオ・レオナルディ
衣装:アルベルト・モレッティ
音響:アドリアーノ・ディ・ロレンツォ
音楽:アンドレア・グエラ
(2014年 イタリア制作 103分)
原題:SCUSATE SE ESISTO!

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
建築家として世界各国で華々しいキャリアを積んできたセレーナ(パオラ・コルテレージ)は、ふと自分を見つめ直し「新たなステップ」を踏み出そうと故郷のローマに帰ってきた。
しかし、イタリアの建築業界は男性中心の社会で、ろくな仕事にも就けず貯金も底をつく。
 (公式サイトより転載させていただきました)

超ポジティブなヒロイン物のコメディ
現NHK朝ドラのヒロインも“びっくりポン”な程前向きですが、こちらの主人公セレーナもなかなか、いやそれ以上です

イタリアのドラマなどを見てよく思う事ですけど、ここでも日本人の感覚では「喜怒哀楽がやたら激しい」人物たちが登場します
特にセレーナのおばさんが(笑)

演出もいちいち大げさで、フランチェスコの登場シーンがやらた長い
あの流し目! スチームの乱舞!
このあたりの強引さがイタリアっぽくて、もう笑うしかない
最初はちょっと引いて見てたけど、途中から自然と笑ってました

実在する女性建築家グエンダリーナ・サリメイのリフォームプラン「緑の空間」が、ローマ郊外の公営住宅に採用された事にヒントを得て創られたらしい
映画では大げさに表現されているとしても、そんな事が話題になる位だからイタリアって日本以上に男社会なのかな〜
そういう事情をコメディ仕立てで描いていて、特に女性にはスカッとする映画じゃないでしょうか

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大阪在住と嘘をつくために、モニターに映る背景に置いたのはお城の写真と桜の造花
こんなチープな演出にも違和感を感じないあたり、見ているうちに私の感覚が麻痺してるのかも(笑)

レストランのシーンではローマの伝統料理の事が少しわかったり、ジュリアっていう名前が古くさい感覚とか、色々面白い。
帰国子女の友達いわく「ジュリア」という名前、私達が中学生の頃はアメリカで結構イケてる名前だったらしいんだけど
月日が経つってこういう事なんですね。。。と、本題から脱線してしまいました

ゲイで、ハンサムで、優しくて、気が合って。。。なんて、フランチェスコはある意味女子の理想の友人像かも
他のゲイ達も可愛らしくて、特にボンテージ着てたぽっちゃりさんが礼儀正しくて笑った
可愛いと言えば、フランチェスコの息子も眼鏡姿がキュート★だったな

大阪ステーションシティシネマにて鑑賞

ナショナル・シアター・ライヴ「夜中に犬に起こった奇妙な事件」

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上映時間:約2時間51分
原作:マーク・ハッドン(ガーディアン賞受賞)
脚色:サイモン・ステファンズ
演出:マリアンヌ・エリオット
主演:ルーク・トレッダウェイ

【概要】
並外れた頭脳をもつ15歳のクリストファーは、その才能を活かして隣人シアーズさんの犬を殺害した犯人を探そうとする。2013年のオリヴィエ賞で作品賞を含む主要7部門(最優秀プレイ賞、最優秀演出賞(マリアンヌ・エリオット)、最優秀主演男優賞(ルーク・トレッダウエイ)、最優秀助演女優賞(ニコラ・ウォーカー)ほか)を独占し、ブロードウェイ公演では第69回トニー賞プレイ部門最優秀作品賞や最優秀演出賞などを受賞した。日本でもV6森田剛主演で上演され、高い評価を受けている。
(公式サイトより転載させていただきました)

2014年から(たぶん)始まったナショナル・シアター・ライヴ

これまで見ることができたのは
『フランケンシュタイン』
『コリオレイナス』
『ザ・オーディエンス』
『リア王』
『オセロ』
『ハムレット』(ベネディクト・カンバーバッチ版)

残念ながら見逃した作品は
『ハムレット』(ローリー・キニア版)
『欲望という名の電車』
『二十日鼠と人間』
『スカイライト』
『宝島』

そして、今回の作品
今迄見た中で、一番好きです!

ヘレン・ミレン主演の『ザ・オーディエンス』も素晴らしかったけど、
これは何ていうか、心の中心にズドーン!ときました
気が早いけど、今年一番の作品はこれかもしれません

主人公クリストファーは父親と二人で暮らす15歳の少年
利便性のため一般に「自閉症」という名称で呼ばれる、そんな症状を持つクリストファーが、ある夜犬の死体を発見したことから始まる冒険が描かれています。

観客である私達の冒険心やワクワク感はくすぐられますが、当のクリストファーは冒険なんてしたくなかったでしょうね(笑)

彼は、人の表情から気持ちを推し量る事ができない、見たものの情報が一度に頭に入ってきてしまう、など普通の人とはちょっと違う個性を持っています。
けれども数学や物理は、大学入学試験である上級試験を受けるくらい得意です。

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そんな彼が語る言葉やステージ上の演出で、クリストファーの頭の中のイメージが鮮やかに目の前に差し出されたかのような感じなのです。
体験型というか、クリストファーの気持ちを追体験しているような感覚です。
脳で直接感じるとでも言えばいいかな。。。

クリストファーの語る言葉もいちいち面白いし、宇宙空間を漂う感覚や、電車のゆれなど、フィジカルな表現も素晴らしい。

夜中に犬に起こった奇妙な事件 (ハリネズミの本箱)

夜中に犬に起こった奇妙な事件 (ハリネズミの本箱)

 

原作は未読だったので、早速図書館で借りました。
クリストファーの語る言葉が面白くて、一気に読んでしまった。
お芝居は結構、原作そのまんまという印象です。


可笑しくて、心が痛い
見ているうちに、段々クリストファーに共感していきます。
理解することはできていないのだろうけど、彼と一緒に衝撃をうけ、彼と一緒に泣きました。

字幕が相変わらず変だったけど(苦笑)、素敵な舞台です。

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主演のルーク・トレッダウェイも素晴らしかった。
どう見ても、15歳の少年クリストファーでしたよ。
イギリスの演劇界は狭いけど、層が厚いというか深いな〜

今後(4月に)上映があるのは、吉祥寺オデヲンだけのよう。
ぜひ、関西でアンコール上映して欲しい、私ももちろん沢山の方に見て欲しいと思う舞台です。

 

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2月に見た映画 ちょこっと感想

振り返ると、2月は新作映画をほとんど見てませんでした
鑑賞順で、少しだけ感想を ネタバレしてます

「キャロル」

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公式サイト:http://carol-movie.com/
※音声が出ますのでご注意ください

ケイト・ブランシェット主演ですから、いそいそと見にいきました!
ケイトのゴージャスで上品なたたずまい、ルーニー・マーラの可愛さ、美しいファッションや映像など、見るべき点は多いのですが。。。。
ラブ・ストーリーって何故か乗れない時があって、難しいですね
私には、なんだか奇麗すぎてしっくりこなかったのです
女性同志の恋愛物語でも「アデル、ブルーは熱い色」(2013年)なんかは、文字通り熱くなったんですけどね〜


「サウルの息子」

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公式サイト:http://www.finefilms.co.jp/saul/
※音声が出ますのでご注意ください

凄まじい

第二次世界大戦時、アウシュビッツのユダヤ人収容所
同胞の人達をガス室に送り、その後の死体処理や清掃などを行う「ゾンダーコマンド」と呼ばれるユダヤ人達の部隊があったのです
数ヶ月間にわたる任務の後、彼らも抹殺される運命にあるので、反乱を起こそうとするのですが。。。。

何も考えないよう、見えるものを見ないようにする
最初の20分で主人公について想像したのは、そんな事でした
見ているこちら側でさえ、感覚を麻痺させないと惨過ぎる状況
画面の端にボンヤリと映る死体の数々を、なるべく見ないようにしている自分がいます

次々と殺しても追いつかないくらいのユダヤ人が大量に輸送されてきて、殺処分に追い立てられるドイツ兵達の精神状態も異常だったと思われます

あの時代のドイツ人(やフランス人やハンガリー人やその他のユダヤ人を迫害した人達)のほとんどが悪人だった訳も無く、人間というものがいかに置かれた状況によってどうにでもなる存在なのかと、今さらながら寒気がします

監督はタル・ベーラの助監督だった人らしく、なるほど余計な装飾もなくシンプルな構成で、見る者の心を揺さぶる映画でした
しかし、しんどい映画です


「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁」

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公式サイト:http://sherlock-sp.jp/
※音声が出ますのでご注意ください

イギリスではTV放送されたドラマですから、原則ドラマのファンの人が見に行くモノだと思います
BBCのドラマ「SHERLOCK」を知らない人が見ても、わかりにくい作品なんじゃないでしょうかね〜
ここら辺、配給会社の宣伝方法に問題があるような気がします

私は、面白かった! ので、初日と先日の2回見に行きました
しかし、本編の前後の流される映像は特に必要なかったかな

スティーヴン・モファットとマーク・ゲイティス、二人のシャーロック・ホームズおたくが、少々悪ノリしてやりたい事をやった、という印象
ライヘンバッハの滝のシーンが(笑)
あそこにワトソンを登場させるなんて禁じ手という気もしますが、個人的には一番ウケました

マイクロフト(恰幅のいい彼の太い指が可愛い!)の、モリアーティをウィルスに例えたセリフでピン!ときたのですが、入れ子構造のような話の展開で、結構ややこしい
いずれにせよ細かい事はどうでも良くて、いかにクスッと笑えるツボがあるかが、楽しめるかどうかの別れ目だと思います

ルパート・グレイヴスには、やっぱりコスチュームプレイがしっくりきます

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実はドラマなどで現代劇に出てる彼にちょっとした違和感を感じてたのですが、今回は私の中ですごいフィット感(笑)
話し方も現代版とは少し違ったように感じました
それは、ホームズ&ワトソンにも言える事なのですが
ベネディクトの声、映画館だとさらに聞き惚れてしまいます〜
そして、ヴィクトリア朝時代のワトソンくんはよりコミカルで可愛い(はあと)

しかし、鹿撃ち帽はもういい気がします。こちらはお腹いっぱい


他にも、ナショナル・シアター・ライヴで「夜中に犬に起こった奇妙な事件」を鑑賞したのですが
こちらはすこぶる素晴らしかったので、後日レビューをあげる予定です、たぶん

 

【関連する記事】

「市川崑 光と影の仕事」〜若尾文子さん出演作を中心に〜

3月11日まで上映中の「市川崑 光と影の仕事」
ちょこっと感想を(鑑賞順)

「日本橋」
1956年/カラー/111分/スタンダード/大映東京
原作:泉鏡花 脚本:和田夏十 撮影:渡辺公夫 美術:柴田篤二 音楽:宅孝二

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【淡島千景・山本富士子主演で、泉鏡花の戯曲を映画化
サイレントでも溝口健二監督によって映画化されているようです】

姉御肌で気っぷのいい雰囲気を醸し出す、お孝役の淡島千景さん
対照的に、清葉役の山本富士子さんは楚々とした美しさ
そして、若尾文子さんがとっても初々しくて可愛らしい!
この時代だからこその、女優さん達の存在感が素晴らしい

話の展開にはちょっとついていけない部分もあったけど
日本橋の芸者の世界、この雰囲気は良いですね〜
なんとも摩訶不思議な映画でした
一部、生理的に気持ち悪いシーンもあるので、ご注意ください

泉鏡花といえば、私「高野聖」で挫折してから全く読めてません。。。
映画化されてると、少しだけその世界を覗き見したような気になれます


「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」
1959年/カラー/87分/シネスコ/大映東京
原作・脚本:久里子亭 脚本:舟橋和郎 撮影:小林節雄 美術:下河原友雄 音楽:塚原晢夫

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【やもめの父(佐分利信)の事を思い、父が決めた婚約者との結婚を断るキャリアウーマンの和子(若尾文子)だったが。。。】

ムムッ、オープニングの曲はまるでフランク永井さんの「有楽町で逢いましょう」のようなムード歌謡で、ちょっと戸惑ってしまいました
「父を心配し嫁に行けない娘」という某監督の映画でも御馴染みのストーリーですが、最終的に主人公の選ぶ道が現代的で後味が良いです

スチュワーデスの妹・通子役に野添ひとみ、その妹からアプローチされる学生役が川口浩と御馴染みの顔ぶれで、このあたりのノリは軽いです〜
当時のJALに、あんな落ち着きのないスチュワーデスがいたとは思えないけど(笑)

京マチ子さんは、仕事も結婚も自分の欲しいものはガッチリ手に入れるしたたかな役で、若尾&野添コンビと共演した「婚期」のボーッとした義母役よりもずっとしっくりきてる気がします。
そういえば、「温泉女医」(1964年)の丸井太郎さんもちょこっと出演されてました

梅子の結婚式で義兄(船越英二)が半次郎(菅原謙二)と張り合うシーンなどコミカルで楽しく、結構好きなタイプの映画ですが、とにかく出てくる男達が皆、情けない〜
それに比べて女達の生命力溢れること!
メガネっ子の若尾さんも可愛らしくイキイキしてて、ファン必見です

あなたと私の合言葉 さようなら、今日は [DVD]

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「女経」
1960年/カラー/100分/シネスコ/大映東京
三者三様の悪女が主人公のオムニバス映画で、第二話だけが市川崑監督作品です

第一話「耳を噛みたがる女」監督:増村保造 原作:村松梢風 脚本:八住利雄 撮影:村井博 美術:山口煕 音楽:芥川也寸志
【隅田川に停泊するダルマ船で家族と暮らす紀美(若尾文子)は、銀座のホステス
キャバレーの客から巻き上げた金を株に投資するしたたかな女だが、会社社長の御曹司(川口浩)の事は本気だった】

今作の若尾さんは、男を手玉にとる蓮っ葉な女の役
いけしゃあしゃあと嘘をついても、なんか可愛いんですよね
しかし、最終的に好きな男性の事は大切に思って身を引く、というなんとも都合のよいわかりやすいストーリー
それでもセンチメンタルには流れない、ある種ドライな若尾さんの魅力が楽しめます

第二話「物を高く売りつける女」監督:市川崑 原作:村松梢風 脚本:八住利雄 撮影:小林節雄 美術:渡辺竹三郎 音楽:芥川也寸志

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【流行作家の三原(船越英二)は、海岸で見かけた爪子(山本富士子)に惹き付けられる】

山本富士子さん、最高!ですね
前半のとってつけたようなきどった話し方(笑)から、後半のサバサバした様子への変貌といい、笑わせてもらいました
「小説家の三原が失踪か?!」という最初のシーンは、画面がグルグル回ってちょっと気持ち悪かったのですが

爪子の部屋を訪ねてきた喫茶店勤めの女の子が、またまたポップな軽いノリの野添ひとみさん(笑)
「この商売はね、私くらいずば抜けて美人じゃないと成り立たないんだよ」という爪子のセリフに納得、ニンマリしてしまいます

頰被りをしてアイロンがけをしている爪子は、突然訪ねてきた三原を見て大あわて(可愛い!)
前半の不気味な雰囲気とコミカルな後半とのギャップも面白いし、今さらですが船越英二さん、息子さんとは格が違いますね〜

第三話「恋を忘れていた女」監督:吉村公三郎 原作:村松梢風 脚本:八住利雄 撮影:宮川一夫 美術:柴田篤二 音楽:芥川也寸志
【先斗町の芸者だったお三津(京マチ子)は、今は京都の宿屋の女将におさまっている
ある日、死んだ夫の妹(叶順子)が吉須(川崎敬三)と結婚するため金を借りにきた】

京マチ子さんは、女将とかマダムとか、やっぱりこういう「くろうと」の役がよう似合いはる〜
そして、中村鴈治郎さん演じるお三津の義父が、やっぱりか!という感じでイヤらしいスケベなおジイです(笑)
こういう役をやらせたら、右に出る者はいませんね〜

普段からお金に厳しいお三津ですが、元彼の根上淳の言葉には絆されそうになります
他の二話がカラッとしていたのと対照的に、しっとりとした京都の映像と共に情緒的な雰囲気に包まれています

女経 [DVD]

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「おとうと」(デジタル復元版)
1960年/カラー/98分/シネスコ/大映東京
原作:幸田文 脚本:水木洋子 撮影:宮川一夫
美術:下河原友雄 音楽:芥川也寸志

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【17歳のげん(岸恵子)は、何かと問題を起こす弟・碧郎(川口浩)の面倒を見ていた。
小説家の父(森雅之)の後妻となった継母(田中絹代)との関係が上手くいっていなかったからだ】

冷淡な義母と無責任に息子を甘やかす父親のせいなのか、グレてる割に甘えん坊の弟
そんな弟が若くして亡くなってしまう
ストーリーだけ追うと悲劇なんですが、水木洋子さんの脚本が良いのか、悲壮感がなくて面白い

主演の岸恵子さん、これまで上手いと思った事がないので少し心配でしたが、それなりに良い感じです
森雅之さんがまたも煮え切らない役で、見ていてイライラさせてくれます(笑)
田中絹代さん、思い込みの激しいイケズな役がすごく上手いですね
この方、けなげな役よりもこういう性格の悪い役の方が、私の中でしっくりきます
そして、少ししか登場しないのに、岸田今日子さんの存在感が(笑)
また、この頃の江波杏子さんは美しいです〜

という訳で、主役二人以外の俳優陣にばかり目がいってしまいました。

「炎上」(デジタル復元版)
1958年/モノクロ/99分/シネスコ/大映京都
原作:三島由紀夫 脚本:和田夏十、長谷部慶治
撮影:宮川一夫 美術:西岡善信 音楽:黛俊郎

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【三島由紀夫「金閣寺」の映画化
吃音症の青年僧が驟閣に放火するに至るまでを描く】

1950年、実際に起きた金閣寺放火事件をテーマに三島由紀夫が創作した小説「金閣寺」
その小説を元に和田夏十が書いたオリジナル脚本は、小説とはラストが異なっています

三島のこの小説、評価が高いのはわかるのですが、読んでて暗くなるし正直好きじゃない本です
そこをベースにしている訳ですから、ずっと底辺に暗い何かが淀んでいるような、不穏な空気がまとわりつくような映画となっています

市川雷蔵という人はカッコイイ役の時はスター性があって良いと思いますが、アイラインも入れずに(笑)こういう暗い役だとあまりにも地味すぎる
いや、上手いんですけどね。もうちょっとどこかに魅力のある主人公でないと、見ていて辛い

北林谷栄、中村鴈治郎、仲代達矢など周りの役者も有無を言わせぬ上手さで、宮川一夫のカメラワークも文句無し
しかし、好きな映画とは言えない。。。と同時に、見ておいて良かったとも思います
後味の悪い映画って、往々にしてこういう気持ちを抱かせるのです

あと1週間を残すのみとなった市川崑映画祭ですが、今週は金田一さんが活躍するあのシリーズなどが上映されているようです

 

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2月第2週・第3週の上映作品(大阪市内)で気になる映画

デパートはバレンタイン商戦真っ只中!
カカオの産地にこだわったフェアトレードチョコレートが浸透してきてますね
梅田阪急のチョコレート博覧会に行きたい気もするけど、混雑が耐えられない!
やっぱりネットショッピングが便利だわ〜 送料かかるけど

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「ブラック・スキャンダル」と「ブリッジ・オブ・スパイ」 対照的な2本のアメリカ映画

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公式サイト:https://warnerbros.co.jp/c/movies/blackmass/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・製作:スコット・クーパー
脚本:マーク・マルーク、ジェズ・バターワース
製作:ジョン・レッシャー、ブライアン・オリヴァー、パトリック・マコーミック、タイラー・トンプソン
原作:ディック・レイア、ジェラード・オニール
撮影:マサノブ・タカヤナギ
美術:ステファニア・セッラ
編集:デヴィッド・ローゼンブルーム
衣装:カシア・ワリッカ=メイモン
音楽:トム・ホルケンボルフ
(2015年 アメリカ制作 123分)
原題:BLACK MASS

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
 1975年、サウスボストンでアメリカの正義の根幹を揺るがす史上最悪の汚職事件が起きた。
マフィア浄化に取り組むFBI捜査官のコノリー(ジョエル・エドガートン)は、イタリア系マフィアと抗争を繰り広げるギャングのボス、バルジャー(ジョニー・デップ)に敵の情報を売るよう話を持ちかける。
(公式サイトより転記させていただきました)

実在したアイルランド系マフィアのボス、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーの話を基に作られています。

見る前には、ジョニデが特殊メイクのハゲヅラだし、予告編が「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)みたいなノリなので、コメディ系のクライム映画だと思ってしまいますよね〜。
実は全く違います。あくまでも淡々と犯罪が繰り広げられるのです。

そう、この映画どうも宣伝の方向性がおかしい!
「アウトレイジな奴らに酔いしれろ!」というキャッチコピーも予告編も、映画の雰囲気にそぐわない。
ポスターでは3人並んでるけど、ジェームズ(ジミー)の弟ビリーは核となる役所では全く無いし。
これは、ビリー役のベネディクト・カンバーバッチ人気にあやかろうとしてるのか、または大物政治家というキャラが興味をひくだろうという狙いなのか?

配給会社の姑息な宣伝方法はさておき、映画自体は悪くないと思います。
なんせもう、役者が揃ってますから。
特殊メイクのジョニー・デップが話題にされがちだけど、コノリーを演じていたジョエル・エドガートンが特に良かったし、実質主役だったんじゃないでしょうか。

「キンキーブーツ」(2005年)ではチュイテル・エジオフォーの強烈キャラに影が薄かったジョエル・エドガートン
野心家だけど詰めが甘い、というか踊らされてる感が強くて、一番ハラハラさせられる登場人物です。
そりゃ、奥さんにも見放されるわ!
目立つタイプではないけれど役になりきるというか、こういう俳優さんがすごく好きです。

ベネディクト・カンバーバッチも、兄と距離を置きながらも葛藤する感じを控えめな演技で表現しています。
贔屓目で見ているせいかもですが、荒くれ者達ばかりの中に常識的で上品な人が登場するとホッとするというのが正直なところ。
実際のビリー・バルジャーの写真を見ても、紳士然として写っている。写真を見る限り、インテリの如才ない大物政治家という感じです。

映画の中では、そんな権力の塊みたいな兄弟が母親の世話をかいがいしく焼いている様子が微笑ましかったですね〜。
イタリアマフィアの映画などでも見られますが、身内の結束が強いというか、強面の男達もママには結構ベタベタなのです(笑)

殺しの連続でなかなかグロテスクな映画ですが、コノリーの妻マリアン(ジュリアンヌ・ニコルソン)の部屋をビリーが訪れるシーンが、実は一番怖くてドキドキしました。
犯罪の連続で見ている側がちょっとウンザリした頃合いに、「アントマン」(2015年)では悪役だったコリー・ストールがさっそうと登場します。
上司のマグワイア(ケビン・ベーコン)も、いまいち煮え切らずイラッとしかけましたが、こういう頼もしい検事が出てきてこそ、アメリカ映画ですね。

さて、映画の中のコノリーですが、元々バルジャーに一憧れていたのか全く彼の言いなりという印象を受けました。
おそらく幼少期からの人間関係が大きく影響しているんでしょうが、そのあたりを思い起こすシーンなどは全くありません。

監督は、そういったモノをあえて排除しているようにも思えました。
兄・弟の関係性も、後半の電話のシーンでさらっと描かれているだけ。
俳優達の演技を楽しめる映画となっていますが、物語性や感動などを求める人には物足りなさを感じる作品かもしれません。
個人的には、センチメンタルな部分を感じさせないこういうドライな展開は結構好き。

シエナ・ミラーが逃亡中のジミーの恋人役だったそうですが、このエピソードはばっさりとカットされたようです。
うん、それは正解だったと思います。彼女には気の毒だけど

TOHOシネマズ梅田にて鑑賞


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公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/bridgeofspy/
※音声が出ますのでご注意ください

監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:マット・シャルマン、イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
プロデューサー: マーク・プラット、クリスティー・マコスコ・クリーガー
撮影監督:ヤヌス・カミンスキー
衣装デザイナー:カシア・ワリッカ=メイモン
音楽:トーマス・ニューマン
(2015年 アメリカ制作 142分)
原題:BRIDGE OF SPIES

※ネタバレを含みます。結末に触れていますので、ご注意ください

【ストーリー】
アメリカとソ連が一触即発の冷戦状態にあった1950〜60年代。
ジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)は、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねてきた弁護士だった。
ソ連のスパイの弁護を引き受けたことをきっかけに、世界の平和を左右する重大な任務を委ねられる。
それは、自分が弁護したソ連のスパイと、ソ連に捕らえられたアメリカ人スパイの交換を成し遂げることだった。
(公式サイトより転記させていただきました)

米ソ冷戦時代、米軍パイロットを釈放するためにKGBとの交渉にあたったアメリカ人弁護士ジェームズ・ドノバンの話を基に作られました。
同じように事実がベースとなっていても、こちらはコーエン兄弟が脚本に参加し、スピルバーグが監督という娯楽性もある作品

ジェシー・プレモンス(悪い顔!)のアップと彼の自白から始まる「ブラック・スキャンダル」とは、対照的なオープニングです。
今作は、自画像を描く男が電話を受けるというちょっと謎めいた演出で、これから何が始まるのか?と期待を持たせます。

ジェシー・プレモンスといえば、この映画にも出演してて売れっ子ですね。

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失礼ながら、マット・デイモンがボクシングの試合で殴られた後みたいな顔で、迫力があって見間違えようがありません。

最終的には上手くいくとわかっていても見ていてドキドキするのが、こういう事実を基にしたフィクション映画のお約束

アルゴ [DVD]

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イランにおけるアメリカ人大使館員救出作戦を描いた「アルゴ(2012年)」などはかなりハラハラするように脚色されてました。
しかし、今作はちょっとそういう感じとも違うような。

サスペンス性よりも人間ドラマやアメリカ社会への皮肉を重視したという印象です。
トム・ハンクスだからなんとなく安心してしまう(笑)のかもしれませんが
不屈の男を描き最終的にカタルシスを得られる、正当派アメリカ映画で、スピルバーグ監督だな〜という安定感です。
そういう意味で「ブラック・スキャンダル」と対照的

それにしても、CIAがソ連に送り込む飛行士に自決用の道具を渡すのにはちょっと驚きました。
国の為という大義の為に個人の命をないがしろにするあたり、寒気を感じます。
そんな中、アメリカへの帰路でドノヴァンがパワーズにかけた言葉が印象深かったですね。

自決しなかったパワーズをせめるような目や、敵国のスパイを弁護するドノヴァンに対する攻撃など、極端な論調に陥りがちな社会とも言えるのですが、片や少数派でも信念に基づき行動する人が登場するのが、アメリカ社会の優れた点かもしれません。

ドノヴァンと信頼関係を築く、ソ連のスパイ・アベル役はマーク・ライランスです。

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最近では、「ウルフ・ホール」(AXNミステリーで放送中)でトマス・クロムウェルを演じていますが、まだ55歳なんですね。
一瞬、リチャード・ジェンキンスと見間違えましたよ。

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目と眉毛の間を広げる困り顔演技(?)に特徴がありますが、この映画では「それが役にたつのか?」というセリフと共に、些細な事で動じないスパイのオーラを感じさせてくれました。
ドンパチしない、人間ドラマ的なスパイ映画はやっぱりいいな。

大阪ステーションシティシネマにて鑑賞

 

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「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬」 〜マケーニュの魅力〜

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公式サイト:http://menilmontant-movie.com/
※音声が出ますのでご注意ください

監督・脚本: セバスチャン・ベベデール
(2013年 フランス制作 90分)
原題:2 AUTOMNES 3 HIVERS

※ネタバレを含みます

【ストーリー】
美大を卒業したアルマン(ヴァンサン・マケーニュ)は定職にもつけず、親友のバンジャマンと冴えない毎日を過ごしていた。
33歳の誕生日にアルマンは決意する。
(公式サイトより転記させていただきました)

スタンダードサイズっていうんですか? このスクリーンサイズが作品の雰囲気にあってたし、心の中の声、いわゆるモノローグが多用されてたり、50章にもなる細かいチャプターから構成されてたりといった演出もどこか懐かしい感じがします。

主人公アルマンが高いトレーニングウェアを買って浮き足だってる様子、その友人バンジャマンが気まずい空気を払拭したいが為に話し続ける人物だったりする描写が、個人的には好き。
バンジャマンとカティアが、自殺願望のある従兄弟と遭遇するエピソードも結構ツボだった。
ここら辺のどうでもいいような、ささいなエピソードの好き・嫌いで、この映画の評価が分かれるかもしれません。

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思い出した時に引っぱり出してきて、繰り返し楽しみたいタイプの映画
ただ、この作品がチャーミングなのは、アルマン役のヴァンサン・マケーニュによるところが大きいと思う。

強盗にナイフで刺されたり、突然病魔に襲われ道端で倒れたり、恋人の裏切りに直面したりと、結構ドラマティックな事が色々起きているにもかかわらず、ふわっとしたゆるい空気が流れる不思議な映画

不思議といえば、ヴァンサン・マケーニュの魅力もそう
私も彼が主演だから映画館に足を運んだ訳ですが、見ているうちに段々愛おしく思える人物を演じさせたらピッタリ。

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ミックス毛糸の手編みっぽいロングマフラーを、男の人がジャケットの上に巻くのも可愛いかも、なんて思ってしまった。
いや、ダサくなるかどうか紙一重のところとも言えるけど。

彼って小太りでハゲ散らかしてるけど、ラテン系で暑苦しい男性的なお顔とソフトな雰囲気とのギャップが可愛らしさにつながるのかもしれないなー、などと考えながら映画を反芻しています。

そうそう、茂みでバンジャマンと遭遇する猫も(一瞬だけど)可愛い

シネ・リーブル梅田にて鑑賞

1月に見た映画 ちょこっと感想

1月も今日で終わり。
映画レビューはさぼりっぱなしですが、今月見た映画の感想をちょこっとだけ

「禁じられた歌声」TIMBUKTU

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(2014年 フランス/モーリタニア)
西アフリカ・マリのティンブクトゥがイスラム過激派に制圧された事で起きる事件が描かれる
あまりにも今的で重いテーマでしたが、どこかノスタルジックな美しさを感じさせる作品

「パディントン」PADDINGTON

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(2014年 イギリス)
この世界観には気分が上がる! 特に英国びいきの人には楽しいかも
スラップスティックと言われるいわゆるドタバタ喜劇ですが「多様性を認めよう」というタイムリーなメッセージも含まれてたり

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笑いのツボは結構あります
ニコール・キッドマンが、ピリリと存在感を発揮していました
現在まだ上映中ですので、明るい映画を見たい方はぜひどうぞっ
公式サイト:http://paddington-movie.jp/

「あの頃エッフェル塔の下で」Trois souvenirs de ma jeunesse

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(2015年 フランス)
デプレシャンの『そして僕は恋をする』(1996年)の前日弾的作品
若き日のポールを演じたカンタン・ドルメールが、すごく瑞々しい
とても爽やかな好青年なので、彼が年を重ねてギョロ目のマチュー・アマルリックになるとは、どうしても思えない(笑)
つまんない理屈で自分を正当化する、そんな会話はいかにもおフランス的でイライラするけど、カンタン・ドルメールという逸材を見られたから満足
こちらも現在上映中です
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/eiffel/


『若尾文子映画祭 青春 アンコール』では以下の5本を鑑賞

「初春狸御殿」(1959年)
監督・脚本:木村恵吾
市川雷蔵、勝新太郎、中村玉緒など若手オールスターが勢揃いした和製ミュージカル
市川雷蔵&若尾文子がキラッキラしてて眩しい〜
まさしく娯楽映画!ですが、正直私はちょっと乗り切れなかったな

「銀座っ子物語」(1961年)
監督:井上梅次 脚本:笠原良三、井上梅次
川口浩、川崎敬三、本郷功次郎の銀座っ子三兄弟が主役です
彼らに求愛されるヒロインが若尾さんで出番は若干少なめ
川崎敬三さん演じる長兄のキャラは良かったけど、個人的には脚本が今ひとつだった

「東京おにぎり娘」(1961年)

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監督:田中重雄 脚本:長瀬喜伴、高岡尚平
父親(中村鴈治郎)の全く流行らないテーラーをおにぎり屋に改装した主人公が大活躍
若尾さんがハツラツとして可愛い!
相手役は川口浩、ジェリー藤尾、川崎敬三ですが、この配役はいい感じ
今回見た中では一番爽やかで後味良く、うまくまとまった良い映画という印象です

「温泉女医」(1964年)
監督:木村恵吾 脚本:木村恵吾、田口耕三
時代を感じさせる、ほのぼの人情コメディ
ところで若尾さんの相手役、丸々とした朴訥な青年役・丸井太郎さんって誰?
調べてみると、主役に抜擢されたテレビドラマ「図々しい奴」(1963~)が大ヒットしたせいで五社協定の枠にはめられ、その後の仕事に恵まれず1967年にガス自殺により亡くなられています
明るいキャラクターからは想像できない最後だったようで、残念です

「清作の妻」(1965年)
監督:増村保造 原作:吉田絃二郎 脚本:新藤兼人
愛する夫だけに生きがいを見出し、故に常軌を逸した行動に走る妻
村人達の行動が極端すぎてちょっとイラっとしますが、若尾さんが美しくて色気ムンムン(笑)です
この時若尾さん31〜32歳? まさに女盛りですね

清作の妻 [DVD]

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今回見た5本の内4本がコメディで、その全てに中村鴈治郎さんが出演されていました
この方が出ると一気に面白さが増す気がします
妖しい若尾さんもいいけど、やっぱりコメディのお茶目な若尾さんが好きだな〜

 

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